( ゚д゚)なぬっ? …っと、意表を突かれました!昨春、突如としてCanonデジタル一眼用 CineStyle™ピクチャースタイルを発表して僕らを驚かせてくれた Technicolorさん。今度は Color Assistという名のカラーグレーディング・ソフトをリリースです。
▶ Technicolor : CineStyle Color Assist
さて、何に一番驚いたか?と云って、このプロモ映像をご覧ください。
http://vimeo.com/53536398
なんなんですか?この過剰にフレンドリーな雰囲気は?(笑) 今年、創立95周年を迎えたハリウッドの老舗らしからぬ軽薄さは、まるで少人数の動画好きでコツコツ FCP用のプラグインを作っている、CrumplePopさんたちのノリ(キライではありませんけどね)。
Canonと共同開発するのに1年以上かかったという CineStyleピクチャースタイルは、無償のダウンロード配布で提供する太っ腹ぶりを見せた Technicolorさんでしたが、今回の Color Assistは$99(約¥8,000)という値札を下げた、れっきとした有料ソフトウェアです。
さて。ではこの Color Assistは一体どういうソフトなのか?見ていきましょう。
特徴:
• 簡単操作でハリウッド品質のカラコレを実現
• リアルタイムでルックスの適用とプレビュー
• Technicolor伝統のプリセット・ルックスx25種
• CineStyle(LOG)及び標準ビデオ(Rec.709)に適合
• FinalCut Pro7、PremierePro CS5.5、CS6 専用
仕様(重要部分のみ抜粋):
Mac:Mac OS X 10.6 以降|最低 1GBの VRAMを搭載したGPU
PC:Windows 7(64 bit)|最低 1GBの VRAMを搭載したGPU
モニター解像度:最低 1280 x 900以上
ソフト:Final Cut Pro 7|Adobe Premiere Pro CS5.5、CS6
サポートするビデオ・コーデック:.MOV|.AVI|.FLV|.MP4
サポートするファイル形式:ProRes(要 ProRes Quicktime™ for PC、ProRes 4444はサポートせず)|H.264|DV|WMV
処理できる解像度:SD、HD、2K
インストール可能台数:最大2台までの Macあるいは PCにインストール可
…と、特徴及び仕様を眺めると、FinalCut Pro7、PremierePro CS5.5、CS6用のプラグイン・ソフトに思えますが、実態は少し違います。プラグインは親となるソフト上で稼働しますが、Color Assistは親ソフトとは別に単体で起動しておき、そこへ親ソフトからメタデータ(XMLファイル)を “送信”し、編集が終わったところで親へとラウンドトリップさせる方式です(FinalCut Pro7用は FxPlug形式です)。
では、Color Assistで何ができるか?ですが、簡単にまとめると以下の4つ。
• CURVES
トーンカーブが用意されており、CinemaStyle等のフラットなピクチャースタイルで撮影されたデータに S字カーブの LUTをあてて起こしたり、あるいはグレーディング前の Rec.709撮影データに逆 S字カーブをあてて寝かせたり、といった処理が行えます。
• KEY SELECTOR
画面内の任意の部分を色差選択して、色相、彩度、明度を局所的に変更することができます。いわゆる「セカンダリー編集」機能ですが、但しできることは最小限。トラッキング機能や、マスキング機能、ビネッティング機能等は用意されていないようです。
• COLOR CONTROL
シャドー、ミッドトーン、ハイライトのホイール、並びにスライダーを操作することで色相、彩度、明度を調節する、オーソドックスな 3-Wayカラーコレクターです。
• LOOKS
Technicolor社が誇るシネマティックな “ルックス” から、厳選された25種類のプリセット・ルックスが収録されており、クリック一つでデータに適用し、Color Assist内ではレンダリングなしでプレビューすることができます。また、ルックス・ファイルは別売オプションとしても販売されるもようで、すでに「CineStyle Looks: Movies」と「CineStyle Looks: Extreme」という二種類の追加ルックスが、それぞれ$19で買えるようになっています。
▶ Technicolor CineStyle ColorAssist : Additional CineStyle Looks
さて、Color Assistのユニークな点は、カラコレの結果を一つに絞る必要がないこと。一度のラウンドトリップで “最大9つまでのカラーコンポジションを作成し、すべてを一度に親ソフトに送り返す” ことができるのです。親ソフト上では、以降、対応する数字ボタンをクリックするだけで、複数のグレーディング結果を即座に取っ替え引っ替え、切り替えることができる、という仕組み。これは、今まで見たことがない、ちょっと面白い機能ですね。
その辺りを FinalCut Pro7の場合で解説したチュートリアル・ビデオがこちら。
http://vimeo.com/52726800
以上が Technicolor Color Assistの概要です。
公式サイト上には他にも何種類かチュートリアル・ビデオが用意されているのですが、なぜか?念の入ったことに、Mac用、Win用にそれぞれ「インストール方法」の解説ビデオまでありました。
▶ CineStyle Color Assist: Mac Installation
▶ CineStyle Color Assist: Windows Installation
なにそれ〜?と思ったら、今どき珍しくというか、手抜きというか(笑)、ソフトのインストールが “半自動” なのでした。つまり、FinalCut Pro7、PremierePro CS5.5、CS6それぞれのために必要なコンポーネント・ファイルは、システム階層を辿ってしかるべきフォルダを探り出し、手動でインストールしてくれ、と…(なぜだ?(笑))。
いかがでしょうか? Technicolor CineStyle Color Assist。ボクはニュースを見るやいなや購入する気満々でサイトに飛んだものの、冒頭のフレンドリー過ぎる PRビデオを見てちょっと拍子抜け(笑)。チュートリアルほか全てに目を通した時点ですっかり醒めてしまい、購入は保留。
いえ、あの Technicolorさんが作ったのですから、きっと色々と佳きモノには違いなかろうとは思うんです。ですが、これは明らかにお手軽!便利!が売りのマス向け商品。ライバルは Apple Colorや DaVinci Resolveではなく、Red Giant Software社の MagicBullet Looksあたりでしょうか? そういう意味では、Colorista IIのほうが、セカンダリーでトラッキングやマスク処理ができるぶん格が上かも?
ま、値段も$99と、ライバル製品より一段安いわけですが、正直なところ、なぜ?天下の Technicolorさんがこのような “レンヂでチン” 製品を出すのやら?、ちと理解に苦しむ展開なのでした…。(-_-)
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17 Comments
あまり人気が無かったのか分かりませんが、Color Assistの販売、引っ込めちゃったみたいですね。何か新しいものが開発される前触れだと期待したいですw
一時は Appleに買収されて、次期 FCP-Xに搭載か?なんて噂も流れてましたが、さきほど fcp.coさんに出た続報によりますと、単純に「全く売れなかった」ということのようで。もともと Technicolorさんの経営状態がここ数年芳しくないことと相まって、斬り捨てられちゃったようですね。まぁプラグインまで含めたら、今やカラコレツールなんて、星の数ほどありますからねぇ。。。
fcp.co : What really happened to Technicolor’s Color Assist plugin?
初めまして。専門学校にてアニメを勉強する傍ら、実写動画制作について勉強している者です。
いつも楽しく読ませてもらっています。
今回初めてコメントさせていただきます。
以前から気になっていたのですが、一眼(5Dmk2)で撮影したH.264をProres422(HQ)に素材をエンコードするのは、編集する際に高圧縮の形式ではデコードするのに負荷がかかるためにProres422(HQ)にエンコードするのか、あるいはカラグレ/カラコレを行うために色空間を広くする(?)ためにProres422(HQ)にエンコードするのでしょうか? それとも別の目的があるのでしょうか?
そこらへんの事がイマイチ理解できないのですが、もしもお暇さえあれば答えていただけると嬉しいです!
どうか、ご教授よろしくお願いします!
IKさん、こちらこそ初めまして。コメントと質問、ありがとうございます。
デジイチで撮影した H.264素材を ProResにトランスコード(厳密にはエンコードではなく、トランスコードですね)するのは、ずばり!バージョン7までの FinalCut Proでは H.264や AVCHD等の動画素材をタイムライン上で編集できないからです。ボクは使ったことがありませんが、Premiere Proなら H.264をそのまま扱えるようなので、その場合はトランスコード不要です。つまり、IKさんの書き方で云えば「デコードするのに負荷がかかるために」ProResに変換します。それ以外に “隠された目的” 等はありません(笑)。
ちなみに、「グレーディングのために色空間を広くするのか?」という推理(?)は面白いですが、すでに 8bit 4:2:0で撮影済みのデジイチ素材は、たとえより高色域なコーデックにトランスコードしたところで、新たに色域が拡がったりはしません(撮影時に写ってないものは出てきません)。
さらに云うなら、グレーディング時により重要な意味を持つのは「色深度(8bit?16bit?)」であって、「色空間(Adobe RGB?sRGB?)」ではありません。そして、ココで知っておくべき重要なことは、Apple Colorや AfterEffectsなどのグレーディングソフトやポスト処理ソフトは、データを内部色深度 16bitという圧倒的に豊富な階調(65,536階調)で扱えるけれど、FinalCut Proや Premiere Proを始めほとんどの「動画編集ソフト」は 8bit(256階調)しか扱えないということです。
故に、もしも高品質な後処理(グレーディングや合成等)を行いたい場合(…たとえば低品質なデジイチの 8bit H.264をグレーディングして色をいじってもバンディングを出したくない時)には、「編集ソフト上で動く MagicBullet等のプラグインソフト(=親ソフトの制限に準じて 8bit処理しかできない)」ではなく、Apple Colorなどの専用 16bitアプリ上で処理した方が結果が格段に良いですよ〜!ということです。
…という感じで、ご返答になってますでしょうか? (^_^)v
横槍申し訳ありません。僕からも一つ気になっていたことを。
MagicBulletLooks等のプラグインの機能は親ソフトの制限に準じるのですか?
であればつまり、同じMagic Bullet LooksでもAfterEffectsで作業すれば16bitで作業出来るという事なのですか!
この辺りをはっきりさせたかったのですがなかなか見つからず…。
Negちゃんが横槍を入れてくれたおかげで、昨日、自分が書いた内容に間違いを発見しました。
> 「動画編集ソフト」は 8bit(256階調)しか扱えない
自分で太字にしておいてナンですが、これは半分間違っていました。どうもすみません。書いた通り動画編集ソフトは 8bitデータで編集作業を行うものの、レンダリング(計算作業)はすべて 10bit(1,024階調)の色深度で行っているんでした(そうでなければ、ProRes 422が 10bitコーデックである意味がない)。
さすがに 8bitレンダリングでは何をどうやってもバンディングが避けられないんでしょうね(と、云いつつ、例えば Photoshopなどの画像処理ソフトも基本は 8bit処理なんですが)。
と、自分の誤りを正した上で、Negちゃんの質問。
> MagicBulletLooks等のプラグインの機能は親ソフトの制限に準じるのですか?
プラグインがわざわざ「8bitレンダリング」の制約を課したコードで書かれていない限り「Yes」です。色深度は bit数が上がるにつれて 8bit(256階調)、10bit(1,024階調)、12bit(4,096階調)、14bit(16,384階調)16bit(65,536階調)と階調数が増えていきます。階調数が増えるということは、黒から白の階段の数が増えて細かくなることを意味します。この細かい段階の計算を行うかどうかを決めるのは、あくまでホストAppであってプラグインではないということです。
なので、MagicBullet Loosは AfterEffects上では 16bit色深度で計算されるし、FinalCut Pro上では 10bitでしか処理されないということですね。
ただし、bit数が増えるとより細かく計算する必要が生じるわけですが、その細かい計算には高速な CPUあるいは GPUが必要です。Adobe系ソフトの場合は nVidia、Appleの場合は ATIの高速な(=VRAMをてんこ盛りした)グラボがないと、レンダリング処理時間がかかり過ぎてやってらんないか… あるいは、ホスト Appに「メモリが足りません」と云われて処理できないかも知れません。
…上記、裏が取れている情報は半分。残りの半分は(しょっちゅうポカばかりやっている)ボクの中の「常識」なので、疑ってかかってください(笑)。
お早い返信ありがとうございます!
なるほど!と思わせてもらいました…基本的にWindows+Adobeという環境しか経験したことないので、Appleと聞くとなにやらスゴイものと思ってしまっていたんですがそういう事だったんですね(笑)
AEは、色深度(色空間とは別だったんですね)は16bitにして、体験版のMagicBulletでカラコレに挑戦していたんですが、どうにも難しいですが、頑張ってみます!
どうもありがとうございました!
いやあ、Apple=「なにやらスゴイもの」ってイメージ、昨年登場した FCP-X以来、メタメタのボロボロなんですよ〜(泣)。Win+ Adobeのほうが、今や主流じゃないっすかね。なんにしても、頑張ってください。(^_^)v
ちなみに、raitankさんはAfterEffectsが扱える色深度についてどこから情報を得られましたか?先ほど私が見ていたAfterEffectsのマニュアル(http://help.adobe.com/ja_JP/aftereffects/cs/using/WSB48B246A-E34D-4d3f-A0A4-B932FD3F12E6a.html#WS81984DEB-D195-4822-9A06-EA0D00A0ECC7)にて見ると、(少なくとも最新の)AfterEffects上では32bit深度まで扱えると書いてるように見えるのですが…。
いや、32bit深度まで扱えたとしても、ぜんぜん不思議じゃないです。どこまで細かく計算できることにするか?って、単にホストAppのアーキテクチャの問題だけですからね。ただ、たとえば 10bitで計算するのと 32bitで計算するのでは、レンダリングにかかる時間が何倍になるものやら?なので、あとは実益がどれほどあるかを見極めることが必要ですね。要は「こだわり」だけで突き進むのではなく、ホントに違いが目に見えるのかどうか?ってところを検証して…(笑)。
昨日書き込んだ後色々いじってみましたが、やはり最大32bitまで扱えます。
それよりも一番驚いたのは、AfterEffectsってDCI P3カラースペースを扱えたんですね…!まあRED R3Dを扱えるので当たり前っちゃあ当たり前なのですが。試しに一年前の「Pararel」のMXFデータをグレーディングしていたのですが、恐ろしく極端なグレーディングをしないと暗部が潰れないし明部が飛びません。4:2:2の恩恵なのか32ビットの恩恵なのか分かりませんが、いやはや恐れ入りました…。
> 試しに一年前の「Pararel」のMXFデータをグレーディングしていたのですが
それは Negちゃん、技術的な理由も色々あるでしょうが、誰が撮ったと思ってるんです? とだけ云っておきましょう(笑)。(←ボクじゃないってところがミソね(笑))
これはFCP無しで,単体で読み込み書き出しが出来ないと言う事でしょうか?
仰る様にグレーディングソフトはかなり充実してる様ですので,何故今お手軽系なソフトか?という疑問はありますが,「編集をしないカメラマン」には役に立つのかもしれません。僕も少しFCPの3wayとかカラーを触りますが,結局思った通りに出来ないです。そういう撮影者は意外と多い気が。もしくはこれをテクニカラーブランドでアマチュアに売って,その後のコンシューマー市場展開を狙ってるとか。
思いつく中で一番ありそうな使い方は,現場でLUT適用しながらスタッフ皆でモニタリングとイメージの共有,あとざっくりグレーディングして「この部分ギリギリだから,照明少し直そう」的な使い方かなぁ・・・。まカラリスト現場に呼べる予算なら,そもそも本番用のグレーディングソフト持ち込めばいいだけですが。
でも、ネット上ではそもそもテクニカラー・シネスタイルって「オワコン」では無かったでしたっけ(笑)
あー失礼しました,これを使うと「テクニカラーのピクチャースタイル・EOS用」がその性能を余さず発揮出来る,と言う訳では無いんですね。汎用で,テクニカラーのノウハウが入ってると言う感じですか。
> 単体で読み込み書き出しが出来ないと言う事でしょうか?
はい。将来的には、FCPも PremiereProもなしでルックス適用後のイメージを確認できる「CineStyle MetaColor™ Player」というユーティリティが登場するらしいですが、現時点では、ホストアプリがないと、読み込みも書き出しもできません。
> これを使うと「テクニカラーのピクチャースタイル・EOS用」がその性能を余さず発揮出来る
その通りです。それが、まず「最初の売り」です。ただ、たぶん CineStyle「専用」と謳ってしまうとそんなに売れないので、『汎用でも充分に役に立つ!』ことをアピールしようとした結果が、ご覧のフレンドリーな PRビデオなのかな?と。(^_^;)
こういうお手軽なのは、若い人が案外すごいものを作ってくるので楽しいんですよね。
でもうちも、これ以上グレーディングソフトばっかり増やしてもしょうがないしなあ。。。
そうそう。すでに大方のユーザーは同種のソフトを複数持ってる!っていうところが大きいですよね。いかに Technicolorの製品とはいえ、これ以上買い増すのだったら、単に簡単!便利!安い!だけでなく、なにか革新的な “One More Thing” がなくては…。