今年の NAB 直前に突然発表された Canon と Technicolor の提携には驚きました。なにに驚いたか?といえば、もちろんまず最初に映画マスタリング界の大御所である、あのTechnicolor が!という衝撃。続いて、Canon のプロビデオ機器とではなく、EOS(一眼レフカメラ)がその提携先だった!という事実。さらには、近日中に Technicolor が監修・開発する LOG 形式の「ピクチャースタイル」を無償配布します!という太っ腹な発表、の3点でしょうか。
下は NAB 会場で提携に関する質問に答える Technicolor 社の Joshua Pines さん。
この動画中で語られている、Technicolor が Canon 製一眼ムービー向けのピクチャースタイル開発に乗り出した理由が奮ってます。Joshua さん曰く、日々 TV や映画のマスタリング素材として持ち込まれるデータに 5D MarkII で撮影されたものが増えてきて、他のプロ機材で撮影したフッテージとの整合性を取る現実的な必要性が生じたため、だそうで。やはりアチラでは、一眼ムービーがどんどんプロの現場に食い込んでるんですね。
で、その『近日中に無償配布』と予告されていたピクチャースタイルですが、日本時間の4月30日にもう公開されちゃいました(はやっ!)。
▶ technicolor : CineStyle
さっそくほうぼうでテスト撮影の結果が公開され始めていますが、従来世界中のさまざまなユーザーが工夫し、開発し続けてきた “スーパーフラット系” ピクチャースタイルを軽〜く凌駕する驚きの出来映えに、海の向こうの HDSLR 系サイトでは『さすがはテクニカラー!』と、プロからアマまで大絶賛です。
▶ Vincent | Laforet : New Technicolor Profile for Canon HDDSLRs
▶ Philip Bloom : Technicolor Profile for Canon DSLRs is now available for download
▶ FreshDV : Technicolor’s Free CineStyle Image Profile for Canon DSLRs
▶ Zech’s Camera : New Picture Style from Technicolor
▶ CINEMA5D : First tests with the Technicolor CineStyle
Technicolor社のサイトにある FAQ によると、このピクチャースタイルは同社と Canon USA 社が12ヵ月の時間をかけて研究・開発したもので、EOS 5D MarkII に最適化されています(…が、もちろんその他の EOS でも使えます)。
ただし、このピクチャースタイルを適用すると、ビデオも写真も問答無用で「標準の H.264 REC709」ではなく「LOG カラースペース」での記録になりますから、その意味がわからない人は要注意です。
とても簡単に言ってしまうと、LOG カラースペースで撮影されたビデオとは、『撮影後にカラーグレーディングすることを前提にした映像データ』のことです。そのままではコントラストと彩度が極端に低いぼんやりした感じの絵なので、普段、グレーディングなどしない『あたしは撮って繋いでおしまい!』な人は、逆に Technicolor CineStyle を使ってはイケマセン。
LOG カラースペースでの撮影に関しては、『Why Shoot in LOG?(なぜ LOG で撮るのか?)』と題された以下の動画でお勉強しましょう。
● AbelCineTech : Why Shoot In LOG?
さて、LOG の意味を理解した上で、ぜひ Technicolor CineStyle を使いたい!という人のために、以下に手順とヒントをまとめておきます。
1. Technicolor のサイトから CineStyle ピクチャースタイルをダウンロードする。
▶ Technicolor : CineStyle
2. EOS ユーティリティ(V.2.6以降)を使い、EOSに CineStyle ピクチャースタイルを転送する。
3. EOSの電源を入れ、転送した CineStyle を選択後、ピクチャースタイルを以下のように調整する(Technicolor 社推奨)。
シャープ= 0
コントラスト= −4
色の濃さ= −2
色合い= 0
4. 撮影時の ISO は、EOS の CMOS センサーのベース感度である「160」か、その倍数 (320、640、800…)に設定すること(Technicolor 社推奨)。
5. 「C.Fn II-3:高輝度側・階調優先」と「C.Fn II-4:オートライティングオプティマイザ」をオフに設定し、また常に若干アンダー気味の露出設定で(間違ってもオーバーしないように)撮影すること(Vincent Laforet 氏推奨)。
7. ピクチャースタイルのダウンロード時に「Step 3」に表示される「S-curve look-up table(LUT)」をダウンロードしておくと、FinalCut Pro 等での編集時に画面表示を「REC709」相当に変換することができる(Technicolor 社推奨)。
8. LUT の読み込みと適用には、Red Giant Software 社が無償配布している Magic Bullet LUT Buddy プラグインが便利。
▶ Red Giant Software LLC. : Free Product Registration
というわけで、ボクも今日ちょっとテスト撮影してみました。
● Technicolor CineStyle で撮影
● Technicolor CineStyle で撮影後、Color と MagicBullet Looks で調整
う〜ん、なにをどう工夫したところで H.264 だし 4:2:0 だしということは変わらないので自ずと限界はありますが、今まで使ってきたピクチャースタイルの中では、確かにピカイチかも。
…しかし、いつもの事とはいえ、こんなビッグニュースが、なぜ日本では全く報道されないのでしょうね?(あ、GWだからっ?(笑))
[追記:5月6日]
CineStyle ピクチャースタイルのダウンロードページから入手できるSカーブの REC709 LUT ですが、なんと昨日5日付でデータ形式が「.mga」ファイルに改良されました(わおっ!)。これで不安定な LUT Buddy を使わずとも、File > Import > Display LUT コマンドで直接 Color のシーケンスに一括適用することができるようになりました(右図参照)。
…ちなみに、この「S-curve_for_CineStyle.mga」は、Color のデフォルト LUT 参照フォルダ
User/Library/Application Support/Color/LUTs
に保存しておくと、一発で選択できて便利ですよ〜!>akiraさん
8 Comments
akiraさん、こんにちは。LUTファイルは、のちほどFCP上から読み込む際にわかりやすい場所であれば、どこに保存しておいても大丈夫ですよ!
ただし、うちの環境では Magic Bullet LUT Buddy が非常に不安定で、S-LUTを読み込んで作業していると、かなりの確率でFCPが落ちます(泣)。そして、一度このようにして落ちると、初期設定ファイルを全削除しないとFCPの不安定さが直りません(泣)。
というわけで、私はTechnicolor社提供のS-LUTの読み込みはやめて、Color(あるいは Magic Bullet Looks)上のカーブ機能を使い、自分でSカーブ補正しています(やれやれ…)。
raitankさん、お返事ありがとうございました。
FCPが不安定になるのは、あまりよろしくないですね。
では私もColorで色をいじることにします。
ありがとうございました!
今日テストしていて見つけたのですが、Color の “Color FX” セクションに「Smooth Step」という標準Sカーブのプリセットがあって、これがちょうど良い感じです。編集済みフッテージを Color に送ったら、まずこのプリセットを適用してカラースペースを「REC709」相当に戻し、それから Primary〜Secondly と通常のグレーディングに進むと良いようです。ぜひお試しください。
raitankさん、
まずColor FXからいじるというのは新しいですね。
試してみます。
ありがとうございました。
akiraさん、本文末尾に追記しましたが、昨日付けでLUTのファイル形式が改良されて、Colorから直接読み込めるようになりましたよ〜!
追記ありがとうございます。
User/Library/Application Support/Color/LUTsに
ダウンロードした S-curve_for_CineStyle.mga を保存したのですが
掲載されている写真のようにメニューに現れません。
インストール後、再起動をかけたのですがそれでも出来ませんでした。
LUT Buddy が邪魔をしているのでしょうか?
すみません。
Color ではなく FCP を見ていました。
Color で確認できました。
ありがとうございました。
大変貴重な情報をありがとうございます。
質問ですが、
Step 3 でダウンロードした「S-curve look-up table(LUT)」のファイルは、どこに保存しておけばよいのでしょうか?