3D的なもの ②:360度・全周囲ビデオ

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あいだに一篇「」が入ってしまいましたが、先週公開した「3D的なもの」のつづき。前回は立体音響(聴覚)でしたが、今度は 360度・全周囲ビデオ(視覚)です。

その昔、Apple が開発した QuickTime VR という技術がありました(…って、今でもやってる人いるのかしら?) いちおう今でも検索すると、昔の Apple の解説ページが出てきます。が、サンプルページが死んでいて、もう実物を見ることができません。
Apple | Take QuickTime VR out for a spin

ほんの5年くらい前までは、この技術を使ってコンテンツを作っている人や会社が、まだ沢山存在していたと思うんですが、今や出てくるのは更新の止まったページばかり。しかも、アクセスするとかなりの確率でブラウザが固まります。もはや捨て去られた過去の遺物臭がぷんぷん…(泣)。

要は『カメラを水平に回転させながら撮影した写真を繋いで 360度見渡せる精密なパノラマ写真を作り、そこに専用ソフトでインタラクティブ性を付加したもの』とでも言いましょうか。…と書いて今さら気がつきましたが、コレってまんま Google のストビューですね(笑)。
まぁ似たような仕掛けではありますが、ストビューの目的があくまで “情報の提供” であるのに対し、QTVRのほうは、もっと “アートあるいはエンターテインメント” を指向していました。

ボクは自分では作ってこそいませんでしたが、わりとこの QTVRが好きで、ひっそりと『いつかは動画でもグルグルできるようになるに違いない』と思い続けてきました。

…で、とうとう、その決定版みたいな 360度・全周囲ビデオが登場したのでした。
下にリンクしたビデオは、去る6月15日にバンクーバーで開催された「Stanley Cup」というアイスホッケー大会の決勝で、地元の Vancouver Canucks が敗れたことに腹を立てた一部の熱狂的ファンが暴徒と化し、ダウンタウンで暴動が起こった際の記録映像です。
※ 下の画像がリンクボタンになっています。リンク先のページでフルスクリーンボタンをクリックしてから再生してみてください。また、再生中にマウスのドラッグで表示方向を変更することができます!

● The Vancouver Riots by northStudio360


いえ、もちろん “360度見渡せるビデオ” 自体は、もう何年か前から色々な方式で出てはいたんです。ですが、今までは「再生 FPS が低い」、「画質が悪い」、「操作性サイアク」なものばかりで、それはそれは美しかったかつての QTVRパノラマ写真とは比べものになりませんでした。

上のビデオを制作したのは、カナダはバンクーバーの northStudio360という映像制作会社です。同社は、社名を見ただけで全周囲映像へのこだわりが伝わってきますが(笑)、今までも星空のタイムラプス映像からヘリコプターを使った空撮映像まで、ひたすら 360度映像にこだわってきたようです。こちらのページに今までに制作した作品のプロモリールがあります。
northStudio360 | NS360 Showreel

今までよりも、上の最新映像の方がグッと画質が向上していることがわかりますね。実際、同社ではネットと機器の進化を睨みつつ、頻繁にハードを変更しては画質の向上に努めているそうです。下の写真はニュースサイトで見つけた上の映像収録中の風景ですが、なるほど、カメラが仕込まれた “長めのモノポッド” を支えるカメラマン氏の姿が写っています。

写真では見えませんが、モノポッドの下部には振動を抑えるためのウエイトが付いているそうです。また、上部のものものしいケーシング内に収められた5台のカメラからはそれぞれ FireWireケーブルが伸び、カメラマン氏のバックパック内にある PCが5ストリームの映像を同録していると書かれています。

こうして撮影者さんと道具を拝見すると、想像していたよりもずっと小型のカメラを使っているようで、ひょっとして中身は GoPro HD?という気もしますが、でも GoPro ならわざわざケーブルを伸ばして同録などする必要はない筈で、やっぱり違うのでしょうか?(northStudio360 さん自身は機材の事をあまり明確にしていないので、これ以上はわかりませんでした)
PhotoBlog | Explore Vancouver hockey riots in 360-degree video

…ところが、“GoPro HDを使った 360度映像” なら、上の映像よりもずっと以前に、すでに撮られていたことが判明しました(笑)。
こちらも収録コンテンツはスポーツですが、内容はギネスブック認定を賭けて今年2月4日にカナダはアルバータ州エドモントンにあるアルバータ州立大学で開催された、「世界最大のドッヂボール大会!」だそうで…。
※ 下の画像がリンクボタンになっています。こちらも、リンク先のページでフルスクリーンボタンをクリックしてから再生してください。また同じく、再生中にマウスのドラッグで表示方向を変更することができます!

● 360-degree Video: World record dodgeball game in Edmonton


撮影したのは、写真家の Ryan Jackson さん。使ったのは、1280x960モードに設定した GoPro HDx4台とさまざまなソフトたち。詳細は Ryan さんのサイトで紹介されています。
Ryan Jackson Photography | Shooting 360-degree video with four GoPro HD Hero cameras

手作り感いっぱいのリグを持ち、ギネス記録目指して 1,000個のボールを投げ合う 2,000人のアルバータ大生たちの間を走り抜ける Ryan さん。…楽しそうですね(笑)。

しかし。きっとたまたま偶然なのだろうとは思うものの、northStudio360 の皆さんも Ryan Jackson さんも同じカナダ人なんですね。…カナダの人って、なにか 360度映像を好む特別な理由があったりするのでしょうか?

6 Comments

  1. 林茂信
    Posted 2011/08/10 at 12:24 | Permalink

    現役のパノラマ写真サイトです。ご参考まで。
    http://www.amaronap.com/

    こちらのサイトは非常に参考になりました。
    ありがとうございます。

    • Posted 2011/08/10 at 12:44 | Permalink

      林さま、貴重な情報をどうもありがとうございます。ただいま外におりますが、のちほど必ず!この稀有な現役サイト、拝見させていただきます。今後ともどうか宜しくお願いいたします~!

  2. akira
    Posted 2011/08/09 at 22:12 | Permalink

    これの最たる物が、マトリックスを監督したウォシャウスキー兄弟の「スピードレーサー」ですね。
    彼らはQuickTime VRの技術を使って、世界中のあらゆる場所や建物の中を撮影して、通常映画撮影許可の下りない場所も、映画の中で背景に使っています。
    この映画以外に同じ試みをしている映画は僕は知りません。

    • Posted 2011/08/09 at 22:42 | Permalink

      マジですか、akiraさん。「マトリックス・三部作」は大好きだったものの、「スピードレーサー」は未見、ノーチェックでした。こりゃ早速レンタルしてこなくっちゃ!(笑)
      大変貴重な情報を教えていただき、ありがとうございました!

  3. filming
    Posted 2011/08/09 at 13:49 | Permalink

    QuickTime VR 懐かしいですね。。よくマンションの物件紹介みたいのに、ありましたね。。しかし上の2つ良く思いつきましたよね?自分は360°はグリグリしているとすぐ酔うタイプで向いていませんが、平気な人には遊び心満載なコンテンツだとおもいます。意外とカメラがあれば、FinalCutとかでできてしまうんですね。。。

    • Posted 2011/08/09 at 13:57 | Permalink

      ありましたねぇ、不動産物件紹介映像(笑)。ボクは QTVRというと TOKYO VR PROJECT さんのサイトが好きで、昔はちょくちょく覗いていたんですが、この記事を書くために数年ぶりにアクセスしたら Chromeが固まっちゃって…(爆)。

      northStudio360さんは、すでに Microsoftや Yahoo!、BBCなどのTVキー局とかにも作品提供実績あり、の様子なので、今後の展開に要注目!って感じです。

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