さて、大変なことになってしまいました。後出し大魔王の Canonさんが、さらに上をいく後出し作戦で来た REDにボロ負けです。“三日天下”という言葉がありますが、せっかくのハリウッドイベントを来場者の温かい拍手と共に終えた Canonさんの天下は、なんと1時間も保ちませんでした(泣)。
「3K for 3K(3K映像を$3Kで)」をスローガンに開発が進められていた筈の RED Scarletは、当初 2/3インチセンサーと固定式8倍ズームレンズを搭載した廉価なエントリーモデルになる予定でした。
ところが蓋を開けてみると、センサーや筐体、サイズや重量、オプションやアクセサリーなど、ほとんどの構成物をアニキ分である Epicと共有し、値段だけ約 1/3の$9,750(約76万円)に下げるという驚くべきコストパフォーマンスを誇る、しかもレンズ交換だってできる立派な中級機として登場してきました。
実際のところ Epicとの違いはデータレートだけ、AI Canon EFマウントと SSDスロットまで付属してこのお値段!という信じられない内容であり、来年の第二四半期には登場する予定の、次期センサー “Dragon” にもアップグレードが可能だと正式にアナウンスされています(ただし内部の基盤も交換する必要が生じるため、アップグレード料金は Epicからのアップグレードよりも高額になるそうです)。
…一番皮肉なのは、EOS C300には EFレンズを装着してもオートフォーカスが使えないというのに、Scarletの AI EFマウントなら、ちゃんと Canonレンズがオートフォーカス付きで使えることでしょうか(爆)。その他、驚きのスペックは以下の通り。
<画角とフレームレート、RED RAW 圧縮率(クリックで拡大)>
<その他の仕様>
センサー | 1400万画素 MYSTERIUM-X™ |
---|---|
画素数 | 5,120x2,700 |
Dレンジ | 13.5ストップ、HDRx™ オンで18ストップ |
レンズマウント | Al Canon EF/PL マウント(オプション) |
センサー画角 | スーパー 35mm(動画)/APS-H(スチル) |
フレームレート | 23.98、24、25、29.97、47.96、48、50、59.97 fps |
モニター/出力 | HD-SDI、HDMI(フレームガイド込み/クリーン)1080p 4:2:2、720p 4:2:2、 SMPTE タイムコード、24-bit 48Khzオーディオ |
記録メディア | REDMAG(SSD)モジュール:(64、128、256GB) |
音声 | 2チャンネル非圧縮 24 bit 48KHz 4channelオプション、AES/EBUデジタルオーディオ |
重さ | ボディのみ/約 2.3キロ |
材質 | アルミ合金 |
来月、12月1日には出荷を開始するということで、さっそく予約を受け付けているようですが、現状すでに「サイドハンドル」「REDmote」「EVF」の在庫が底をつきかけ、また標準装備のアルミ製 EFマウントが足りないことから、安定供給体制に入れるのは来年2月以降としています。
この圧倒的な力量差(というか、RED総帥 Jim Jannard氏の力の入れ具合)を見せつける REDの大本営発表を受け、ボクの情報源である海外のブログたちは(一旦は C300を絶賛していたサイトまで含め)、それはもう見事なまでに、今はほとんど100%が “アンチ EOS C300” の論調に傾いてしまいました(あちゃー (゚Д゚;))。そんな中、ProLostの Stu Maschwitzさんだけが、唯一こんな冷静な言葉を呟いているのが目立っています。
▶ ProLost : From the Canon C300 FAQ
By all indications, Scarlet X does more than Canon’s C300, for less money. But things are rarely that simple.
Red certainly seemed to sweep Canon’s leg today by pitching a Scarlet that out-specs the C300 at half the price, but I’m not content to leap to any conclusions without comparing these cameras—and the ecosystems that accompany them—at the atomic level. Allegiances are convenient. Analysis is difficult.
[抄訳]
すべてに渡って、Scarlet-Xのほうが Canon C300よりも優れている。安いし。でも、そんなにシンプルに決着がつく物事など、そうそうあるものではない。
今日 REDは、およそ半分の金額で C300を凌駕するScarletを発表し、完璧なまでに Canonの足をすくうことに成功した。でも、実際に実機を手にとって比較するまで、そして本体だけでなくレンズや周辺機器等の状況を細かく検討するまで、ボクはそう簡単に結論に飛びつくことはない。やみくもに忠義立てするのは無責任。分析は難しいのだ。
もともと$3K(約24万円)程度で出す!と宣言していたのに、実際に製品が日の眼を見るまでに3年以上もの時間がかかり、また当初の宣言の3倍の値段で登場しておきながら “圧倒的な賞賛” を手中に収めてしまった、RED Scarlet。
もちろん、内容が値段に見合うものに変貌していたから、という理由もありましょう。また、対する Canonの EOS C300が、4:2:2記録とはいえ4Kではなく単なるフルHD解像度、しかも 8-bitコーデックなのに “SONY F3よりも高かった!” という事への失望と反発もあるのでしょう。
ただ、実際どの機種が残って歴史を作っていくのか?に関しては、Scarletも C300も、Stuさんが仰る通り簡単に時期尚早な結論に飛びつくのではなく、“お披露目会以降” (たとえば、Scarletは本当に12月1日に出荷開始するのか?とか(笑))をしっかりと見極めなくてはならないのでしょう。
16 Comments
よい選択をするときに必ず万人が受け入れるというわけではないので、
canonは期待はずれになる部分を知っておきながら、正しい選択をしたのだと思います。
万人に受け入れられることなんて、あり得ませんものね。今回の発表に関して言えば、3rdEye Studioさんがご自身のブログで「RED、鬼!!」と書かれていましたが(笑)、発表直後に見事に足をすくわれてしまったことも、評価に多大に影響しているでしょうし、少し長い目で見守りましょうよ? と、ボクは思っています。(^_^)
こんにちは!ここでご紹介いただいてたんだ!
それにしても3000ドルって言ってたのに、世界の人から「ええ~あれは嘘だったの!高いよ!」っていわれず、むしろ「安い!!」と思わせちゃうジムさんの経営者としての手腕は見事ですよね。僕も最初は、ええ!?Scarletはそんな安いの?と驚いたんですが、あとでそういえば昔みんなで欲しいって話してた時は40万円くらいの感覚だった気がしてたぞ、、と思い出して、、さすがだなあと感心しました。
CANONは僕は期待外れとは思ってなくて、むしろ僕の仕事にはピッタリなんじゃないかなあと思ってます。
3rd Eyeさん、無断でご紹介してすんません。(^_^;) でも読んだ時に、「RED、鬼!」に超ウケたものでつい。。。
おかしなものですね。あの日、Canon vs REDの戦いは明確に REDの後出しジャンケン勝ち!だったのに、時が経つにつれて、全世界的に C300の人気がじわじわとぶり返してきたようです。…というか、REDも結局使えるようにシステム組んだら Canonと値段変わらねーじゃん!?ということも、すでにバレたし(笑)。
C300よりも同時発売のシネ対応EFレンズのほうが生き残るかもしれませんね。だいたい、従来のEFレンズではフルスクリーンに対応は無理だと自分で認めたようなもんだからこその新製品では?
「フルスクリーン対応は無理」と仰るのは、光学性能的に(=解像度的に)というニュアンスでしょうか? だとしたら、例えば Zeissの Compact Prime.2 と Zeissの一眼レンズシリーズ(ZF、やZEなど)でも、レンズ自体はまったく同一で、ただ筐体やフォーカスリング、絞りリング等の作りと、そして内部的には絞り羽根の枚数が違うのみのようですから、Canonさんのも、レンズ自体は既存EFレンズとそんなに変わらないかも?です。
ボクはレンズに関しては、Matthew Duclosさんという職人さんのブログで勉強中なんですが、どうも光学性能的には一眼レンズもシネレンズも、もともとそんなに変わらないようですよ? (^_^;)
▶ ZEISS CP.2 VS. ZF.2
初めまして。以前からROMっていたものです。
さて、4Kじゃないことにあちらこちらで不満があるそうなんですがこちらのblogさんで面白い記述が。
http://mono-logue.air-nifty.com/monolog/2011/11/eos-c300-cinema.html
この意見はどうなんでしょう。確かにドラマなら1080で十分かな、とも思うんですが。
アメリカでは以前はドラマすら35mmという話を聞いたことがあるんですが今はどんなもんなんでしょうね?
negさん、こちらこそ初めまして!(^_^)v
あらー、これはまた素晴らしい情報をありがとうございます。ボクのような単なるニュースゲッターではなく、こういう専門的な事を個人として書いておられる方が日本にもいらっしゃったのですね。とてもとても勉強になりましたし、ボク的にはこの方のお書きになっている事のほうが、おおかたのWeb批評よりも正しい気がします。今回のC300に限りませんが、たいていガタガタ言うのは(ボクも含めて(笑))、そもそも自分じゃ買わない人がほとんどなんで、現場では普通に使われるようになると思うんですよね。。。
アメリカのTVドラマは、今やほとんどが REDやALEXAで、ところにより 5D MarkII、まれに GH2もあり、なんて事になっているようですが、C300も今後はそこに組み込まれていくんでしょうかねぇ。
色々と読んでいくと、Scarlet X はオーバークランクする際、(2Kの60fps / 1Kの120fps 設定時)
焦点距離が変わってしまうと言うなんとも信じがたい仕様になっているそうです。
つまり、24p なり 30p なりで撮っていて、同ポジでオーバークランク撮影しようとした時に、画角がズームインした画になってしまうということで、これはイタいな〜と思っています。
まぁつきあい方次第と言うことでしょうが、REDはアフターケアとかすごーく時間かかりそうですし、チップもDragonにアップグレードしたとき旨く作動するかとか色々と先に見えている不安要素も多々ありますね。
パッケージとしての価格は魅力的ですが、「パッケージ」にしては足りない物が結構ないですか?個人的にはファインダーも欲しいんですけど。
不安解消のために2台所有するなんて、5Dや7Dならいざ知らず、100万円近い物を2つも買うことなどフリーの人間に出来るはずもございません。。。
と、いろいろ突っ込んでしまいましたが
C300に対する物欲はほぼ0に近い私です。
スペックの割には高いです。の一言。
C300買うんだったら、がんばってScarlet のパッケージと本体のみを1台買うかな。
…ですねぇ。一夜明けてみれば、すでに世界中で「出荷前にすでに死亡!」とか言われてますし(苦笑)。>C300
でも、今回登場したズームレンズも、まぁ映画用としてはこれでもフツーの値段なのかな?と思ってたんですが、よくよく見たら T値が「通し」じゃないんですね。30-240mmまでがT2.95で、300mmではT3.7。たかだか一日の間に、こういう細かいところまで含めて全てにダメ出しされてしまって。どうするんでしょうね?Canonさん。…と思う反面、ガタガタ云ってるのって「どうせ自分じゃ買わない人」だけだったりして(笑)。けっこう現場では普通に “定番” になるのかも知れません。
いつも情報ありがとうございます。
映像制作の現場では新しいカメラを買ったからといって、良い仕事が入ってくるわけでもない。
よほどのcamera geek(オタク)でもない限り、100万円もするカメラなんぞ、買わない!って思ってしまうが、でもでもあのREDが百万円以下で手に入る!(本体だけですが=笑)となると、予約ボタンをポチッといきそうですね。車より安いし!なんて思っていたら、後ろに嫁さんの姿が!「何してんの!」(泣)
最近、ものの値段てよくわかんないですよねぇ。クルマより安いし!はその通りですけど、そもそも今やクルマが100万円以上する根拠もよくわからなくなってきていたりして(爆)。(^_^;)
ただ、モノとして手に入れたい気持ちにさせてくれる道具が時々ありますね。REDもちょっと、その経統。やはり、教祖的な、あるいは狂信的な(?)リーダーのもとで作られているモノがヤバいんでしょうね。Apple製品にしろ、REDにしろ。
サポートとか安定度とか田舎者が手にするといろいろ振り回されそうなREDですがこの価格なら飾棚に一台欲しいです(笑)
120fsが1Kというのが惜しいですが4Kで撮影してHDに加工というのはやってみたい気がします。
でもキャノンも今回はチカラ入ってるから高めの設定(ハリウッドサポート料付き?)だけど次は低価格版出して来そうな気がしますね。
先日7DとF2.8の標準ズームを知り合いに売ってしまったとこです…レンズだけ残しとけばよかった(笑)
出た!お大尽! ふじのん師匠はそうでなくっちゃイケマセン(笑)。ぜひ飾り棚に一台、召し上げてください!! (^_^)v
C300はこの分だと(超不評&Scarlet)、半年後には半値くらいに値下がりしてるんじゃないでしょうか?(笑)
おはようございます。またまたすばらしい記事をありがとうございます。ほんと、手に取ってみるまでわからないのですよね。Epicでさえ、まだ安定していないのに。。。でもよく思い出してみたら、僕の知るEpicは初期ロットのほう(X?)なので、新しいものは安定しているのかも。そんなEpicでも現場ではみんなわくわくしながら使っているので、Scarletが浸透していくのはひょっとしたら早いのかもしれませんね。でも、Canonの防塵防滴性能には脱帽です。F3の説明会に参加したときに営業の方に「防塵防滴は?」とききましたが、寝耳に水といった感じでした。しかし、たしかに、オートフォーカスやスチール、HDRのことを考えるとScarlet強いですね……堅牢性能をとるか先進性能をとるか……いずれにしても購入できるような値段ではないので「傍観者」ですが(笑 楽しみですねー
iwanaさん、ども! REDは、たとえバックがしっかりしているとはいえ、所詮は Canonなどと比べてはいけないほど小さな、ほとんどガレージメーカーみたいな企業ですからねえ。Jim Jannardオジサンの趣味でやってる会社というか(笑)。それが、立ち上げからたかが数年で、すでにしっかりとハリウッドに食い込んでいることの方が驚きなのかも?(^_^;)
でも現場がワクワクするというのは、やはり “素晴らしい道具” なのではないでしょうか…(笑)