元はといえば、先日アップしたイベント収録映像 でボクの Glidecam映像がヨタヨタしていたことから、フォーラムでの会話中、撮影部の1-300さんに『グライドカムってダイナミックバランスの調整はできるのでしょうか?』と尋ねられたのが発端でした。
んー? ダイナミックバランス…?(なにそれ?)(汗)
● ダイナミックバランスのとれたステディカムのデモンストレーション映像
ダイナミックバランス:ビデオスタビライザーを用いる際には、まずスレッドの重心点を軸にしてバランスをとるべし。これ即ち Dynamic Equilibrium(動的な釣り合い)と称するなり。然るのちに静止状態で持ち上げ、前後左右方向への振れを調節する。これ即ち Static Balance(静的バランス)と称するなり。かような二種のバランスが調整されたスタビライザーは、これを “Dynamic Balance がとれている” というものなり。
このダイナミックバランスの理論は、Steadicam オペレーターの Jerry Holway氏と Laurie Hayball氏が2003年に上梓した「The Steadicam Operator’s Handbook」という本の中で明らかにした概念で、その神髄は “物理の方程式” で記述されています。
ダイナミックバランスの概念、方程式、具体的な方法論をまとめた「A Dynamic Balance Primer」という簡易マニュアルが Jerry さんご自身のサイト上に公開されていることを 1-300さんに教わったボクは、さっそくダウンロードして拝読させて頂きました。
ところが… わからない(泣)。
いえ、数式や方程式をとりあえず脇に置けば、理屈はわかるんです。ただ、その理屈を自分の Glidecamに適用し、ダイナミックバランスなるものを実現する方法がどうしてもわからないのでした。
Glidecamのマニュアルを再読し、また Glidecam社サイト内にある Glidecam Forumを覗きました。同じ疑問を持った質問者は見つかったのですが、何年も前に書き込まれたそのかたの質問には回答がついていませんでした(爆)。
さらに “ディープ探索モード” に入ること二日。ありました!ありました!(笑)。DV INFO.net という主にセミプロからプロくらいのレベルのカメラマンが集まる情報交換サイトの過去ログに、そのままズバリ『Glidecam4000でダイナミックバランスをとるにはどうしたらいい?』をはじめ、ダイナミックバランスについてのスレッドを多数発見!
▶ DV INFO.net | Glidecam 4000 – can you achieve dynamic balance?
▶ DV INFO.net | Canon XH-A1, Glidecam 4000Pro and Dynamic Balance
▶ DV INFO.net | Glidecam 4000Pro Balance Keeps Shifting
▶ DV INFO.net | Camera Repaired — Now Heavier, and Glidecam Problems!
ふむふむふむ… とこれらの話題を読み込んだところ、ナント驚いたことに Glidecamのような “逆T字型スタビライザー” のほうが、重量の基点を3箇所以上に分散させてバランスを取る Steadicam系スタビライザー(の、主に大型モデル)より『ずっと簡単にダイナミックバランスをとることができる』と言うのです。以下、幾つか抄訳。
Glidecamはその構造上、ダイナミックバランスをとるのが容易なスタビライザーである。Seadicamと違い、Glidecamのギンバルは固定されている。つまり ギンバルの XYZアラインメントは最初から完璧にセンタリングされているのだ。故に、基本的にカメラの重心点がセンターポールの中心線に揃うように取り付けてやるだけで良い。
このバランスを崩さないように、脚部につけるウエイトは必ず前後で同じ枚数をつけ、またセンターポールからの距離も前後等しくなるように調整すること。あとはいつものように前後左右のバランスをとって静止バランスを決め、ドロップタイムが3秒になるように調整するだけだ。
ギンバルの位置がセンターポール上のどこにあっても、ダイナミックバランスには影響しない。ギンバルの位置が関係するのはドロップタイムだけである。つまり、ギンバルの位置によって垂直方向にどれくらい引っぱられるか、が変わる。それによって、どれだけダイナミックバランスの効果が出やすいか?は変化するが、ダイナミックバランスがどれだけ安定するか?とは関係がない。
ただし、もちろん Glidecam方式には Glidecam方式固有の弱点もあり…
ギンバルが固定されていること、脚部が前後方向に対称形をしていること、の二つの理由から「Glidecam の方がダイナミックバランスがとりやすい」というのはその通り。だけど、それはマス(重心)が左右方向に飛び出していないことが前提。付属装備をカメラと一緒に色々取り付けるなら、逆にギンバルの位置まで微調整できる Stedaicamのほうが圧倒的に有利。
ギンバルの微調整を繰り返して徹底的にダイナミックバランスを安定させた Steadicam はいつまでも水平方向にスピンし続ける。ギンバルが固定式の Glidecam をこれと同じレベルにまで安定させるのは、現実問題として、かなり難しいと言わざるをえない。
ここまで読み進めてようやく全体像が掴めた… ような気になることができました(笑)。
● 実践編:Glidecamでダイナミックバランスをとる
手順①:カメラの重心点を見つける
安定したテーブルの上で Glidecamに載せるカメラ一式を小さいポイント状のものの上でバランスさせて、正確な重心点を見つける(ココでは目薬のボトルを使用)。
手順②:カメラを取り付ける
カメラを Glidecamに取り付けて、手順①で調べた重心点と、センターポールの中心軸を揃える(Dynamic Equiblium)。
手順③:静的バランスをとる
Glidecamのカメラプレートを微調整して、前後左右の傾きを調整する(Static Balance)。
手順④:ドロップタイムの調整
好みの浮遊感に合わせて、1)脚部のウエイト、2)ウエイトのセンターポールからの距離、3)センターポールの長さを調節してドロップタイムを決める。
以上。
え、これだけ? ホントに?…というわけで、さっそくスピンテストを実施(以下、D90で撮影)。
おぉ〜いい感じに回っとる回っとる…(笑)。では、さっそく喜び勇んで外へ。
…う〜ん。バランスは取れたかも知らんが、やっぱまだまだ練習が必要なんだわ(爆)。
でも。なにはともあれ今回 1-300さんにご指摘いただかなかったら、ずっとダイナミックバランスというもの自体について知らなかったことと思います。この場をお借りしてお礼申し上げます。どうもありがとうございました!
One Comment
色々と勉強になりました。グルグル安定して回れば良いのですね。
それにしてもダイナミックバランスを、奥義書みたいに訳したのには、笑わせてもらいました!
中庭があって、瀟洒でオサレなマンションですね!
人に見つかって、変な目で見られた事ないですか?僕は一度住人に見つかり
スノッブな態度で無視しましたが、完全テロリストと思われた感が。。。
なにせエイリアンでシガニーウェバーがつけていたのって、ステディカムを
美術さんが装飾したものでしたよね?
中庭といえば、某ウィッ◯も同じような中庭タイプのマンションでしたよね!
途中にあったジャガー、まさかraitankさんのですか!?