今日は、10日ほど前に相次いで流れてきた映画製作の BTS(Behind The Scene=舞台裏)エピソードx2題をご紹介。
まず最初は、マーティン・スコセッシ監督の 3D映画「ヒューゴの不思議な発明」のメーキング映像から、ハリウッド映画におけるステディカム・オペレーターの神様的な存在、ラリー・マッコンキー氏が見せる名人芸のお話。
当年とって61歳のラリーさんは、まだ20代中頃の駆け出し撮影助手だった1976年、『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと(アカデミー撮影賞を受賞)』という映画に出てくる有名なステディカム映像を見て、これぞ我が天職!と心をときめかせました。
以降、ステディカム・オペレーターとして関わった映画は、「羊たちの沈黙(1991)」「ミッション:インポッシブル(1996)」「キル・ビル(2003、2004)」などなど、今までに114タイトルにも及ぶ超絶なベテランで、ことに「ヒューゴの不思議な発明」と同じスコセッシ監督の「グッドフェローズ(1990)」で見せた3分に及ぶ長回し映像は、ステディカムを新しい次元に引き上げたと高く評価されています。
▶ IMDb : Larry McConkey
▶ YouTube : Club Scene-Goodfellas
そんなラリーさんが「ヒューゴの不思議な発明」で見せた2分のステディ名人芸をGoProで撮影したBTS映像がコチラ。
▶ Fresh DV : Steadicam BTS from the filming of Hugo
そして、こちらが CGと合成されグレーディングも済んだ、同じ部分の完成映像。
うぉ〜、お見事!そしてそして、ラリーさんの盤石なステディカムさばきもさることながら、圧巻は、1:00からのシークエンスで、カメラが壁際に座るヒロイン、クロエ・グレース・モレッツちゃんを回り込むくだり!
撮影に使われたカメラは、Alexa。ですが、これは 3D映画です。リグに組まれた Alexaは、よく見ると水平・垂直と、二台あることがわかります。これにステディカム一式を合わせたら右写真のごとき出で立ちに…、装備重量はご自身の体重と同じくらいになったそうです(ひょ〜辛そう!)。
…で、こんな格好で、どうやってクロエ嬢と壁の隙間に滑り込むのよ?と思ったら、なんとタイミングを見計らって、大道具さんが(?)セットの壁をガタン!って外してくれるんですね(笑)。
この辺り、映画の現場に詳しい人にとっては「当たり前」なのかも?ですが、ボクは思わず笑っちゃいました。
同じソースを読んで(?)ボクよりも一足先に紹介記事を書いておられる 3rd Eye Studiosさんとこに、更に詳しい情報が掲載されています。ぜひぜひそちらもご覧になってください。
▶ 3RD EYE STUDiOS : 信じられないようなステディカムショット〜ヒューゴの不思議な発明メイキング
さて、もう一つの話題も相当楽しいですよ(笑)。
予算が潤沢にある大作映画には、いわゆる “引き絵” がふんだんに登場します。カメラが引けば引くほど背景が露呈するので、写り込んでも困らない背景を作り込むためにはお金がかかるわけですね。そして、そんな大作映画の象徴である引き絵の中でも、(素人考え的に)ことさら「お金がかかりそうな気がする」のが “群衆シーン” です。
「ロッキー」や「フィールド・オブ・ドリームス」などのスポーツ映画でアリーナを埋め尽くす満場の観客。また、「英国王のスピーチ」で、吃音に苦しむジョージ六世のスピーチを固唾をのんで見守る観衆、「コンテイジョン」などのパニック映画で街路に倒れている無数の人々など。
いったい何人のエキストラを集めてるんだろう?(=日当は幾ら払ってるんだろう?)などと考えたことはありませんか? いや、最近は「どうせ群衆も CGだろう?」って感じでしょうか。
きっと CGもあるのでしょうが、風船 もあるらしいですよ?(笑)
▶ Cinescopophilia : Yes That Actor is a Real Air Head From The Inflatable Crowd Company
アタマ悪そうな人のことを英語で「Air Head(空気頭)」と云いますが、文字通りのエアヘッド(笑)、正式には「Inflatable Crowd(膨脹式群衆)」専門の会社がカリフォルニアにあり、社名もズバリ!「The Inflatable Crowd Company」だそうです(笑)。
▶ The Inflatable Crowd Company
2002年の創業以来、80本以上の映画、TV番組、CMに “群衆を提供” してきた同社では、さまざまな肌の色をした風船ボディ、アジアンからアフリカンまで、ありとあらゆる人相をした貼り付け式人面マスク、コスチューム、かつらや帽子やヘア飾りを用意しており、要所要所に何人かリアルの人間エキストラを混ぜることで、決してバレない群衆を、長時間に及ぶ撮影中 “何時間でも黙って座らせておくことができる” んだそうです。
はぁ〜、風船だったんだ。なるほどねぇ。。。
21 Comments
こんばんは!
明日はナントカ参じられればと願うまるめでございます。
いやぁ、私の最も尊敬するラリーさんが
日本でこんなにフィーチャーされる日が来るなんて!(;_;)
生きていて好かったです、ホンマ。
もう長時間担ぐのはご勘弁、と考えておりましたが
ラリー神さまの偉業を知ると、未だ未だ甘えちゃあ
ダメだなぁ、、、と感じた次第です。
でもね、世界陸上大阪大会の走り高跳びの決勝で
2.5時間近く担いで、その後に優勝者の後ろを着いて
トラック1周したら、、、
う〜ん、思い出したらヤッパリ辞退方向かなwww
還暦過ぎてもご健在なラリー様… いや、“ご健在” なんてもんじゃないですよね? 御年61歳にして、Alxaの二頭立てかついで2分の長回しとかやってるんですから(笑)。
と思ったら丸目さんは丸目さんで、二時間半かついだあと、そのまま続けてトラック一周って… いったい何の罰ゲームなんですか!? (^_^;) ていうか「ゲーム」じゃなくて、「道」か。うん。
舞台裏の情報ありがとうございます。
こんな風にして作っているのかいというのが理解出来ました。
>いかんせん日本では「舞台裏を見せる」ってこと自体に抵抗がある?気がしてなりません
確かに日本では都合の悪い事や、ノウハウは隠すという文化があると感じます。
原発事故でもそうでした。
以前、アメリカに仕事(半導体ICの設計)で行ったときに、仕事の同僚のアメリカ人から
日本人は人を呼ぶときに手首を下に振りますがアメリカ人にはその意味は理解出来ません。
アメリカでは手首を上に振り人を呼ぶからです。そしたら、下に振るというのは隠す文化があるのではと言われました。
そのときまで、そんな事は考えた事はなかったのですが、「はっとしました。」
そのアメリカ人は日本に仕事で何度か来ていたからです。
当方は、よく観察しているなぁーと感心しました。
ビデオファンさん、こんにちは。(^_^)v 今まで意識したことがありませんでしたが、そう言われてみると確かに手を下に振る仕草って『なにかを隠す』ベクトルを感じますね!
ただ、日本発の偉大なノウハウで、「秘匿」とは正反対の事例も沢山あるんですけどね。スクーターで蕎麦を出前する時につゆがこぼれない、いわゆる「蕎麦屋の岡持」だとか、あるいは中国料理店には大抵ある「回転円卓(レイジースーザン)」だとか、あの辺は日本人(個人)の発明で、しかも特許もなにもない、いわば「オープンソース」なハードウェアなのだそうで(笑)。
また、海外のコングロマリットの中には、仏・モンサント社のような、オープンどころか、バイオ処理で「一世代しか作物ができない(ので毎年買い続けねばならない)種」みたいな、世にもキモチ悪い閉鎖性の極致のような戦略を採る巨大企業も沢山あります。…Appleも Facebookも、ひと頃の Microsoft以上にどんどん囲い込みに走ってますし(笑)。
まぁ「企業」はともかく、「個人」レベルではなるべくオープンでありたいものですね…。
この風船エキストラは前にNHKかなんかで見たことがあります(笑)
メイキングを見ていると、日本と欧米では、
規模や役割分担、手間暇などの違いはあれど、
どのくらい色々なノウハウの差があるのか気になってきます。
でも日本が劣ってるとも思いません。
昔は、欧米に憧れて真似る時代でしたけれど、今の日本はJapanとして立派に文化を
発信していい時代だと思います。
まとめると、DVDの特典のメイキングは、少年に夢を見せます(笑)
この手の手法や方法を本気で採りあげたら、きっと日本の現場って、もっと濃い工夫やノウハウが一杯あるんでしょうね。ただ、いかんせん日本では「舞台裏を見せる」ってこと自体に抵抗がある?気がしてなりません。「門外不出の秘伝」というか(笑)。それは、日本的な美意識の一種とも言える反面、『プロは現場で盗んだ(教わった)ワザこそ全て』っていう偏狭で閉ざされた意識も強い気がするんですが、どうなんでしょう?
かたや、欧米の現場の人たちって、僕らの「わ〜!どうやって…?」に対し、すごく積極的に色々な情報(秘伝)を開示してくれるなぁ…って思いません?(「マトリックス」の BulletTime撮影とかもそうでした)。いや、情報を開示してくれるばかりか、色々工夫までして見せてくれますよね。上でご紹介したBTS動画だって、後々こうして公開する事を前提に「わざわざ」ラリーさんのリグに GoProを付ける手間暇をかけてくれているワケで(笑)。
つまり、リッキーさんの仰る通り、こと技術やノウハウに関し、日本が劣っているなんて事は絶対にないと思うのですが、同時に「自分たちの知見・発見、ノウハウ・秘伝を開示・共有する」ことに関しては、まだまだ日本って、いやになるほど意識が低い(ケチ臭い?)気がしてならないのでした(Webで何か有用な情報を見つけても、日本の場合、たいてい「禁・転載/無断リンク」とか書いてあったり、しません…?(苦笑) )。
http://www.youtube.com/user/filmriot
すでにご存じと思いますが、時々目からうろこな技があったりして楽しんでみてますここ。
いえいえ、全く知りませんでした! ちょっとホスト役のお兄ちゃんが喋り過ぎで、肝心のワザ紹介部分が薄味っぽいですが(笑)、ちゃんとしたのもあるのかな? ちょっと見てみますね。ありがとうございます。(^_^)v
http://youtu.be/gWi-rVy49JE
この回とかいかにもアメリカ人ぽくて面白かったです。僕はw
おぉ! ボクが昨日見たヤツは、チュートリアルの部分が早口ですっ飛ばし過ぎていて、ちょっと「?」でしたが、この回はわかりやすいし、内容も秀逸ですね〜(笑)。
ドヘー 、これいいす!
昔、ボクの近所に『ウルトラマン』で有名だった円谷プロダクションありまして、、、。
勿論立ち入り禁止でしたのですがそこは好奇心旺盛なガキで普通に潜り込みました(W)。
で、是と似たようなことしてたんですが今日の今まで訳分からず!
でもこの記事を拝見させていたとき、『ばかやろー、アナログの特殊撮影は何年前から日本でもやってるよ』
とちょっと優越感に浸りました(勘違いかも、爆)。
uedaさん、円谷プロ近隣にご在住でしたか。それは羨ましい!! ボクでも普通に潜り込むでしょうねぇ。
いやボクだったら、ただ潜り込むだけでなく、きっと隊員の小物(レーザー銃とか)を幾つかくすねて逃げたと思います(笑)。
いやー、さすがわでございます(W)!
僕も記事の前にYOUTUBEの動画を見て
「あれ?どうやって回り込んだんだ?」と思っちゃいました。
しずか~に動かすんですかね?大道具さんw
たぶんポスト処理でのオーディオ編集時にすべて綺麗にする作戦で、撮影時には雑音発生上等!って考え方じゃないでしょうか(笑)。
と申しますのも、この壁外し時のガコッっていう音だけでなく、そのずっと手前、00:33のところでは、ラリーさん自身がブーツに拍車をつけた軍服の役者さんに「Now!(はい動いて!)」って大声で指示を出してますよね。ボクは逆にこの掛け声を聞いて、「わ!本番中の現場でこんな大きな声出すんだ!」ってビビりました(笑)。
我々は、8K・HFS・デジタル3Dの普及に断固反対の立場です!
ー 全米エアーヘッド・ユニオン
先日、PRONEWSさんとこの原稿を書いてる時に思ったんですが、無声映画が全盛だった頃に映画館付きで活躍されていた弁士、楽隊の皆さんって、トーキー出現と同時にスパンッ!と首切られて皆さん失業!だったんですよね?きっと。
産業構造の変革と雇用問題。amadeeusさんのコメント見て思い出しました(笑)。
風船たまげた。
デコイ戦車など思い出しますが、なるほどCGより余程良いですね。
http://karapaia.livedoor.biz/archives/51775281.html
ブレイクアウェイ専門業者があったり、ほんとアメリカの裾野の広さはすごい。
あっはっは。知ってる知ってる、エア戦車(笑)。( ´ ▽ ` )ノ これがまた結構な防衛的威力を発揮するのだそうで?
風船人間にしろ、エア戦車にしろ、最初にアイデアを思いついた人がいたのは良いとして、それを実際にカタチにしちゃうところに脱帽ですよホント。ボクだったらたとえ思いついても、絶対に「…な〜んてね(笑)」で終わってる自信あります。(>_<)
やっほです!
縦向きのALEXAが見えてなかったヒトです(笑
SkierのActingCamにKiss X5載せて、パンケーキレンズつけて超軽軽にしても1分で撮るのイヤになる僕にはまったくムリゲー!この人、鬼ですね(笑
> 超軽軽にしても1分で撮るのイヤになる
( ゚д゚)え〜〜!? ラリーさんが鬼なのは認めるとして、ActingCam+X5+パンケーキで1分というのは、そりは3rd Eyeさん、アナタが華奢すぎっす!(笑)