今年の Photokinaでちょっと話題になっているトピックの一つに、「ラグジェリー動画カメラ」があります。Leica、Hasselbladといった名だたるブランドバッジを冠する高額なスチルカメラが、相次いでその動画機能をアピールし始めたのです。
▶ NoFilm School : Leica and Hasselblad Adding 1080p Video to New Camera Lines
まずは Leica。現在開催中の Photokina 2012で、順当に進んだら M10だった筈の製品を単に「M」と名付けて新装開店(Appleの影響?(笑))。この Leica M、内容的にもついに CCDを捨てて CMOSセンサーとなり、また背面液晶にライブビュー表示する(軟派な?)カメラということで、ファンの間では早くも賛否両論の嵐になっているようです。
Leica M
• 2400万画素 LEICA MAX CMOSセンサー
• ライブビュー/フォーカスピーキング
• 電子ビューファー(オプション)
• Leica Rレンズ(R > Mアダプター)
• “Leica ルック” ビデオ(1080p)
• 最大 ISO 6400
• 耐衝撃ゴリラグラス・プロテクター付き 3型 92万画素液晶
• 防水ボディ
• 2012年1月発売
• $6,950(約¥56万)
Leicaルックのビデオってなんだよ〜?とは思うものの(笑)、これまた “最近流行りの” フルフレームセンサー・カメラなんですよね。
それにしても。一週間前から突如、ゾロゾロと “群れで登場” しているフルフレームセンサー・カメラの謎。
コレって商社がどこかから安いイチゴを見つけてくると全国のファミレスでイチゴフェアが始まるみたいなもの? つまり、今年の初めくらいに何か技術的なブレークスルー等があり、突然 Sonyさんあたりでフルフレームセンサーの歩留まりが改善して価格が大幅に下がった!とか、そういうオチなんですかね?
一方、昔からずっと我が道を往くというか “王道のみ” を歩み続けてきた Hasselbladからは、Lunarというレンズ交換式のミラーレス機が登場。
Hasselblad Lunar
• 2430万画素 APS-Cソニーセンサー
• E-マウント(α-マウントアダプター)
• 25 AFポイント
• ウルトラブライト 3インチ高精細有機 ELディスプレイ
• ワンタッチ・フルHDビデオ(オート/マニュアル)
• 外部マイク端子
• 最大連写 10コマ/秒(0.02秒タイムラグ)
• ISO 100 〜16,000
• オートHD、DRO、アンチモーションブラー・モード
• 発売開始:2013年初頭
• $6,530程度(約¥52万)
これはスペックからも、またその形状からもわかる通り、中身は Sony NEXですね。長年のライバルである Panasonicが “Leicaブランドの Panaカメラ” を出しているような按配で出てきた、 “Hasselブランドの Sonyカメラ” ということ? なのかしら?
業界の裏話はきっと “すぐに” 手塚社長からコメントがつく筈なので、そちらで学ばせて頂くとして(笑)、どうしてココに来て老舗ブランドカメラが相次いで動画にシフトしてきたのか?というと、それは動画向けのラージセンサー・カメラ市場がさっさと「成熟」を通り越して、すでに「飽和」のフェイズに入ってしまった証ではないでしょうか。
ほんの一年前、去年の Photokinaや InterBEEまでは、ラージセンサー・カメラの選択肢なんて、せいぜい数台しかありませんでした。それが今や… 20機種くらいありますか?いやもっと? …と、すでに覚えていられない状態です。カメラに限らず、こうした流行商品って必ず競合他社の参入によるカオスを経て、三極化しますよね。
1. 標準的なウケを狙い他社と比肩することを重視した中庸な製品
2. “似たような” 機能が売りの薄利多売な廉価モデル
3. 機能よりもブランドにものを言わせる質感重視の超高額品
いや、まさかラージセンサー・カメラなんてモノが “流行” するとは!?って感慨もあるわけですが、そんなことよりも。コレってやっぱりあと数年もしたら今ある動画関係のビジネスの半分くらいは消滅しているかも?な兆しに思えてならないのです。
90年代、DTPという概念の到来と共に、印刷・出版業界から「写植屋さん」や「製版屋さん」が消え、町の「印刷屋さん」が廃れていった際の動きに非常に近い。そしてその後、デジカメの登場と共に「カメラマン」という職業の地位が危なくなっていった時の状況にとても似ている。
…気がしませんか?
8 Comments
「デジカメの登場と共に「カメラマン」という職業の地位が危なくなっていった時の状況にとても似ている。」
これ、僕が学生の頃から言われ続けて来た事で,「AF・AEが普及すれば、俺ら(講師の先生のような)の頃みたいにピンと露出が合ってればカメラマン,って時代は終わるぞ」って言われて幾星霜,その通りになって来てるんで、現役としては「何を今更」な感じです。仕事は厳しくなりますが逆に「お前が撮る理由を証明せよ」と突きつけられてる感じがあって,理由が無い奴は強制退場させられて,面白い状況では無いでしょうか?
僕は機材に期待するのではなく,自分が変わって行けたり深化出来る事に期待したいと思ってます。撮影がへタッピな奴・表現したい事を持たない奴が機材を云々言ってるのはみっともないですから。ライカにも幻想は無いですが,もしかしたら自分のやりたい事に使える面白そうな機材としてチェックはしてみたいと思います。しかし良いお値段で(笑)
はい。オモシロイかどうかは別にして、この歳になりますと、「時代や歴史はそういう風にしか進まない」という認識はあります。ただ同時に、この歳になっても「どうしてこの人が残って、あの人が消える(強制退場させられる)のか?全くわからない」という状況も依然として多々ありますもので…(笑)。
4.痒い所を全て網羅した、決定版(←あとあと思い返すと)
こんなウマい話があった試しは歴史的に観てホント少ないですよね。笑
とりあえず思い浮かべたのはAPPLEの一連のイノベーションくらいです。
(ドコモのi-mode技術にうまく気づいて天下とったわけですよね。うろおぼえですが。それにFCPは7まで、かなり痒い所を網羅してユーザーを獲得・信頼された。)
「標準的なウケ」か「廉価」か「超高額品」か。 まるでクルマのよう。笑
しかし業界全体がこの流れに収まっていく可能性は往々にして低くないと思います。
もちろんユーザー(ボク含)は、「今」ある個体から選び、研究して、楽しんだり仕事に使ったりするわけですが、コモディティ化が速いとそれはちょっとイヤですよね。
扱う道具として、わけわかんないバカっぽい機種がでたり、それこそカメラ界のAPPLEがでたり、そんな祭をこれからも期待してしまいます。
もちろん単にこの秋冬コレクションで論を急ぐつもりで言っていませんし、まだまだ興奮するMONOが登場するとボクも思っていますが!
そんな意味でBMCCにRaitankさんが走る気持ち、なんとなくわかる気がします。笑
あぁ〜ホントですねぇ。この(4)が登場してくれれば色々と溜飲が下がって精神衛生上もっとも好ましい展開となるのですが(笑)。…でもそうなると、あーだこーだ文句を言う楽しみがなくなって、逆に退屈したりするのでしょうか?
いやいや、たとえそうだとしても、やっぱりもう少し高いレベルで「どんぐりの背比べ」をしてくれたらなぁ〜と思いますよね。そういう意味では、別項に書いた、競合他社とは違い最初から空気を読む気がない JVC HMQ10みたいな右斜め上への跳躍は大歓迎ですし、センサーが小さかろうがナンだろうが賞賛に値するんですが…。 だからボクは BMCCに走ります!(笑)
退屈しちゃうんでしょうか…しちゃいますよね……(笑)
でも敢えて、言ってみました。だって見てる人は看てると思うんですよ。Victorの試みもBlackmagicの試みも。企業って言っても「法人格」なわけでその人格の挑戦は世界中が注目しているわけですからね。(買う/買えるはおくとしてもです)
しかしアレですよ、ボクは末席イストなので発起人は遠慮したいのですが(笑)、「こんなカメラを私は待っている!」って感じのフォーラム、建ててみてはどうでしょうか!
やや2CHのりで紋切り型の言わば現実逃避なのですが(笑)、ここに集まっていらっしゃる方々の叡智をもってすれば今後のヒントが生まれそうな気もします。 個々人の研究の末にあるだろう、待っているスペック/デザイン/価格帯(←これは理性的な値付け)/その所見・分析を発表しあう。笑 いかがでしょうか?
ともあれ失礼しました。夜更けにわざわざ返信ありがとうございました
起き抜けにすぐにご指名が(^^;
現地で私の知る限りむしろ順番が逆で、Leicaのフルフレームサイズ動画(というか、Leica判動画)に戦々恐々として各社一斉に隠し球を公開に動いた感じですね。
実は、Leicaさん、今回の新しいMが、フルHD対応とそれが一眼動画などのライトな映像業務向けを意識していることをずいぶん早くから宣言していまして( http://digicame-info.com/2012/05/m10-2.html )、その発表も今回のPhotokinaであることを隠そうともしなかったのです。そのため、その攻勢を恐れた各社から一斉にフルフレーム動画に意識が行ったのではないかな、と。(実は私も、このMを見るためにケルンまで来ているようなものでして)
値段もさして上げないことも事前の宣言で既にわかっていましたから(実際、6200ユーロでした)、70万円代のフルフレームサイズ動画カメラが登場することがみんなわかっていたわけです。これは、カメラとしてはバカ高ですが、業務用ビデオカメラとしてはそうでも無い値段な訳です。実際のところ、RIG費用も込みにするとみんなそのくらいは使っているわけでして(笑)
ところが、ご存じの通りLeicaは小さいのでRIGなんていらないわけです。味付けも、何しろあのLeicaですから、ガンマ固定収録の中では一番なのは間違いないわけで。
となると、恐ろしいことにLeicaに一気に一眼動画市場(というか、その中の金払いがいい一部の層)が奪われるというアホな事態も発生しうるわけで(^^;
今回は転送速度が不足してやらないでしょうけど、収録メディアさえ整えば、動画のRAW連番収録もLeicaならごく自然におっぱじめる事でしょう。そうなる前に手を打とう、という事なんじゃ無いかな、と思います。
とにかく各社さん、今回は必ず「Leica M」と「Blackmagic Cinema Camera」の2つは口にしていました。コンシューマ中心のPhotokinaで、BMD製品の名前を聞くことになるとは思いもしませんでしたが(^^;
なお、センサーの値段自体は、大判素子ブームが起こってからずいぶんと下がってるみたいですよ。量産効果ですね。
もう一歩踏み込むと、スマートフォン写真の普及でコンパクトカメラが売れなくなって、センサーがだぶついている、という見方もあります。サイズがずいぶん違うので、同じ設備で作れるかどうか微妙なところなので、この見方には私は疑問符ですが。
なお、ハッセルのは爆笑でした(笑)
みんな、おお、といった後で、……をを?あれ、ひょっとしてNEX-7そのままの形にウッドでゴテゴテと盛っただけじゃね???という反応が面白かったです(笑)
ついでに言うと、そういう事情でしたから、こちらに来る途中にみたSONYさんのRX1は、バカ受けでした(^^;
完全に「こんにゃろーLeicaめ、これでもくらえ!!」ってカメラですからね(^^;
しかもハッセルとの提携(笑)
ハッセル版のRX1とか出たら、完全にLeicaキラーですからね!
こういう大人げないSONYさんは大好きですよ。やっぱりSONYはこうじゃ無くっちゃ行けません。
わははは。社長、起き抜けにお呼び立てしてスミマセン。でも、さ・す・が・ですねぇ〜。なんとなくノリで話を振りましたが、ここまで色々と裏話が拝聴できるとは。期待を 1200%凌駕する情報量(笑)。ひたすら海外ニュースに目を光らせているだけのボクとは違い、ホントに業界の話っぽくて嬉しいです。ケルンから迫真の内幕レポート、ありがとうございました!(^_^)v