元はと言えば、2月に出かけた CP+はケンコートキナーさんのブースで見かけたヘンテコリンなガジェット。その名は Beastgrip Pro(ビーストグリップ・プロ)。樹脂でできたトラス構造のスケルトン外殻にスマホをはめ込むと、スマホカメラのレンズ開口部に外付けのレンズマウントが増設できます。ここに専用の広角レンズや魚眼レンズをつけて、スマホカメラの限界を超えた絵を撮りましょう!という製品。
▶︎ Beastgrip Pro
…と、ここまでなら、すでに競合製品も多数存在するスマホカメラの性能拡張ガジェットに過ぎません。ですが、Beastgripには他社の製品にはない魅惑の専用オプションがあったのです。それは…
嗚呼お懐かしや! 禁断の DoFアダプター! (^_^;)
DoFとは Depth of Field(被写界深度)の略で… といった基礎解説は、大昔の弊ブログ内・関連記事をご参照いただくとして。
▶︎ raitank blog : DoFアダプター関連記事
そもそも raitank blogを始めた当初のメインのお題が『DoFアダプターを使って映像で深度表現を追求しよう!』であったことは、今や知る人ぞ知る昔語り。その後すぐ Nikon D90〜 Canon EOS 5D MarkIIによる “一眼革命” が勃発し、あっという間に廃れてしまった21世紀最初の10年の徒花。
…とはいえ、DoFアダプターと聞いては黙って見過ごすわけにはいかないじゃないですかー。(^_^;)
ケンコートキナーのご担当者様が(うまい具合に!)うちの読者様だったこともあり、Beastgrip Proと、そして日本ではまだ正式発売前の専用 DoFアダプターを、無理を言ってお借りすることに成功(おっしゃ!)。
▊ Beastgrip Proと DoFアダプター
Beastgrip Proは、米・シカゴ在住のワディーム・チャレンコン氏が着想し、Kickstarterで資金調達して製品化したモバイルフォン用の写真/動画撮影リグです。樹脂でできたトラス構造の外殻底部及び上部には一般的なカメラネジ穴(1/4-20)が開いており、また上部にはコールドシューも一つ用意されています。
セットアップは超簡単。スマホを Beastgripに固定し、位置を調整してレンズとスリットを合わせたら準備完了。あとはキットに含まれてくる超広角レンズや魚眼レンズをつければ、スマホの狭い画角を広げることができます。
…が、ぼくの目当ては画角の拡張ではありませんからね(笑)。先に進みます。レンズマウントには以下の順番で色々ゴテゴテと(笑) 装着していきます。
▊ レンズ
Beastgripの一眼レンズマウントは EFマウントです。かつて世界中で販売されていた DoFアダプターたちも、たいていは EFマウントでした(理由:フランジバックの長い EFレンズに対応しておけば、もし他社製レンズを使いたい場合には、マウント変更アダプターで対応可能だから)。昔はそこへ Nikon Fマウントレンズをつけるのが一般的でした(理由:電子絞りの EFレンズとは違い、オールド Nikonは絞りリングで自在に絞り値を変えられるから)。
というわけで本当はここで Beastgripにオールド Nikonレンズの組み合わせをお見せしなくてはいけないのですが、実は一昨年、古いレンズをすべて処分してしまい、今や絞りリンク付き Fレンズが手元に一本もない!という…(汗)。
▊ FiLMiC Pro
DoFアダプターを使った撮影では、一眼レンズを通って GG(グラウンドグラス)上に結像したイメージを撮影します。Beastgrip Pro+ DoFアダプターの組み合わせで動画撮影する際には、GG上に結像したイメージを『スマホ用動画ソフトで撮影する』ことになりますが、撮影用のカメラソフトを選択する際には、ひとつ注意が必要です。
GG上のイメージは上下左右が反転しているので、ただ撮影できるだけのカメラソフトでは、フレーミングが極めて難しい!のです。
オススメは FiLMiC Pro。ISO、シャッター速度、フレームレートの設定から、色温度変更、露出補正、フォーカスロックまで、フルスペックのカメラ並みに細かい設定が可能なカメラアプリです(iOS/Android)。
おまけに FiLMiC Proには DoFアダプターでの撮影に対応した『イメージ反転』機能が用意されているので、Beastgrip+DoFアダプターでの撮影時にも正像でフレーミングを確認しながら撮影できます。
▶︎ FiLMiC Pro(iOS)
▶︎ FiLMiC Pro(Android)
▊ 実際の使用感
というわけで、何度か Beastgrip+DoFアダプターを持ち出して遊んでるんですが、正直、ところどころ立て付けの悪いパーツや、あるいは疑問に感じる構造があります。ただ、ぼくの手元にあるのは日本未発売のいわばβ版。日本の販売代理店であるケンコートキナーさんとしては、そうしたツメの甘い部分に対処してから発売する意向のようですので、期待しましょう。
ただ実際に使ってみた感触として、DoFアダプターの要であるGG(グラウンドグラス:上写真)は悪くないです。かつての高級・高額な DoFアダプターのような、回転したり振動したりといったギミックは皆無。それなのに結像したイメージの粒状感は、とても自然でフィルムっぽい。
DoFアダプターの醍醐味は、言わずと知れたフィルム調の映像。本当はオールデジタルのビデオなのに、いにしえの 8mmや 16mmフィルムの味わひを感じさせる映像が撮れること。
中古市場を漁って Beastgrip+DoFアダプター用に絞りリングのついたオールドレンズを揃えたら、かなり本格的に遊べそうです。(^_^;)
というわけで最後に拙い作例を埋め込みます が、最近、Vimeo動画を埋め込むと「フルスクリーン」ボタンが表示されてくれません(泣)。良かったらタイトルをクリックして Vimeoに飛び、大きな画面でご覧ください。 Vimeoの埋め込み動画で「フルスクリーン」ボタンが表示されない問題、解決できました。「フルスクリーン」ボタンをクリックして、拡大してお楽しみください。(^_^)v
Ethic Statement : ケンコートキナー様より Beastgripと DoFアダプターをお借りしていますが、本稿執筆にあたり原稿料等は一切いただいておりません。本記事は DoFアダプター好きの raitankが勝手に綴ったものであり広告ではありません。
18 Comments
初めまして。
周りにこのbeastgripについて共感できる人がいなくて、色々検索している間にたどり着きました。最近またすごいことになってますね。
https://beastgrip.com/blogs/news/dof-adapter-mk-2-quicksetup
DOF MK2は米国では秋頃発売予定らしいです。さらにbeastrailなるものまで…
これならフォローフォーカスつけてNDフィルターつけてそれからそれからゴニョゴニョ…と妄想が止まりません。笑
本格的な機材ではなくても、この値段なら『それ買って仕事になるの!?』なんて
奥さんの声も気にならないかもしれない^_^
男の買い物に意味はないのです。欲しいとなったら欲しいのです!
初見で失礼致しました。
ur88さん、初めまして。DoF Mk2、なんだか外観がスマートになりましたね〜。果たして使い勝手はどうなんでしょう? 早く触ってみたいです。…いや、でも。今一番注目すべきなのは、実は DoF Mk2ではなくてですね…
ur88さん、関東圏にお住まいですか? もしそうなら今週木曜からの CP+ に出かけて、ケンコートキナー・ブースの Beastgripコーナーに直行してください。この DoF Mk2はもちろん展示されますが、それに加えて驚きの純正オプションが見られますよ〜!(昨日、ケンコーのご担当社様から連絡を受けましたが、まだ公表して良いのかどうかアレなので伏せておきます(笑))。ぼくも絶対行きたいんですが今週は仕事が立て込んでまして、行けるかどうか。う〜ん…。 (/_;)
一見の私めにもご丁寧なお返事、大変ありがとうございます。
むむっ!この他に注目すべきものですって!?
同じく仕事で行けませんが気になりますね!
…もう CP+開幕まで6時間を切ったので、リークしてもいいかな?(笑) なんか、Beastgrip社純正の(なのかな?)アナモルフィックレンズが登場するらしいです!本邦初公開。 iPhone+Beastgrip+アナモルフィックレンズで、2.35:1 のシネマ画角、シネマ画質の映像が撮れるだなんて、なんて時代なんでしょうね。…惜しむらくは、今、自分がもう20年ほど若かったらな、という(笑)。
これはやっぱり見逃せない!ので、ぼくはたぶん土曜日に(無理やり時間作って)行ってこようと思っています。ur88さんもぜひ! (^_^)v
すごい!
アナモルフィックレンズで4k24fps記録ビットレート100Mbpsがスマホで撮れちゃいますね!?どんな画になっちゃうんでしょう^_^
映像製作の間口が広がりますね!
学生さんでも(コスト面だけで言えば)容易に映像の世界に飛び込めちゃいますね^_^
映像系の専門学校さんなんかも喜びそうな代物!
こんにちは。
確かにこのブログの初期はDOFアダプタでしたね。
iPhoneも4Kになったので、BEASTGRIPでリグを組んだクオリティの高い映画を撮る人が日本でも増えて欲しいと思います。
うぉ〜! Trigrassさん、超お久しぶりです! ^ ^
最近はとんと更新も滞っておりましたし、このブログの黎明期を知る人も、もはやそうそうおりますまい、なぁ〜んて思っておりましたら…(笑)。いやあ、お懐かしや。お元気ですか?
本当にお久しぶりです!
元気ですよ〜。久しく映像からは遠ざかってはいるのですが、このブログはRSSで欠かさず読んでます。
このブログのおかげで、映像熱は冷めずに維持出来てます。
ひゃ〜、ありがたや、ありがたや。南無南無…(違)。改めましてきちんとサイトを更新する人にならねば!と、少しく居ずまいを正しました。今後ともどうか宜しくお願いいたします。(^_^;)
映像技術の情報を日本語で仕入れられる数少ないブログなので、楽しみにしてます!
こちらこそよろしくお願い致します。
P.S.
勝手にBEASTGRIPネタを期待してます(笑)
どきっ。ら、らじゃ…!(小声で)
前にraitankさんに言われてから自作品をvimeoにあげてますかれこれ6本くらいですが…(⌒-⌒; )
そうそう。今みたくスマホでまで高精細ビデオが撮影できちゃう時代だと、誰でも「撮影できる」んですよ。でも大切なことは、撮りっぱなしにしないで一本一本きちんと編集して「作品に仕上げること」。そして作品は Vimeoでも YouTubeでもアップロードして、他人様に見てもらうこと! 頑張ってね〜。(^_^)v
ありがとうございます。頑張ります!
iPhoneにDoFアダプター!てスゴいですね!!
ちょうど先日「ZPrime+FiLMiC Pro」で撮ったiPhone 6S映像を見せてもらい、最近のヤングはこんな事やってるの〜?とビックリしていたタイミングで今度はDoF!
ボクもそろそろ替えなきゃ、スマホ。
そうなんですよ、freiheitさん。まさにスゴイ!んです(笑)。いやしかし、freiheitさんのコメントにあった、最近の「ヤング」っちゅー単語もスゴイっす! 20年ぶりくらいに聞きました!(笑)
こんにちは、iPhoneにも色々とアダプターが出回ってますね。僕は数年前iPhoneで映像を撮ってたのでちょっといいなぁ〜っと思ってしまいました。(笑)
おぉ!いおり君、こんにちは。「数年前」ってところがミソですね! そんな以前から iPhoneで映画撮ってたんだ?うひょ〜! 最近はそういう「スマホで製作した映画」だけのコンペとかもあるみたいですね。そいういう時代をフツーに生きてるいおり君たちが、次代を作っていくんですねぇ。。。