もう皆さんご存知の通り、米現地時間で 2月14日、バレンタインデーの日に、REDが Sony Corporation of America及び Sony Electronics Incを相手取り、民事訴訟を起こしました。タイトル通り、現時点でボクには争点が全く見えていません。「なぁんだ、そこが知りたいのに!」と思われた方は、ここでお引き返しください。すみません。(^_^;)
さて昨日、カリフォルニア州南部地区連邦地方裁判所に提出された民事訴訟・第3:13-CV-00334-MMA-BGSによりますと、Sony社製 F65、F55、F5は REDの技術特許3件を正統な許可なく使用して開発されており、それによって同社が蒙った利益と取引の減少、企業評価低下の損害賠償を希求すると共に、これら3機種の製造・開発の中止、販売差し止めと、出荷済み個体の回収を求める、とされています。
▶ Cinescopophilia : RED Takes Civil Action Against Sony Over Camera Patents
ではココで問題となっている 3件の特許とはそもそもどういうものなのでしょう?
米特許番号 8,174,560 : “Video camera” Granted 5/8/2012
米特許番号 8,358,357 : “Video camera” Granted 1/22/2013
米特許番号 8,175,560 : “Method and system for tuning an antenna.”
Granted 5/8/2012
ちなみに訴状とともに、3件の特許概要もオンラインで確認することができます。
▶ PRIOR sm ART.com : Red.com, Inc. v. Sony Corporation of America et. al.
…が、正直、これらを読んでもよくわからんのです(爆)。(^_^;)
技術特許1件につきおよそ30ページの概要が図版と共に提示されており、その中身は?というと、少なくとも上の2件に関しては「RGBセンサーの配列」と「デ・モザイク処理」、そして「圧縮 RAW形式」に関するもののようです。ただ、最後の1件は「アンテナの受信」に関するもので、正直、今回の件や Sonyのカメラとどういう関係があるのか?よくわかりません。
問題は、F65、F55、F5が、これら特許概要に書かれている内容の どこを?なにを?不正に使用して開発・製造されている!と主張しているのか?の筈なんですが、それが見当たりません。
…少なくとも僕には見つけられなかったのですが、それはボクのいい加減な英語力のせいであるやも知れず(爆)。そこで、もしどなたか、こうした方面に明るい方がいらっしゃいましたら、ぜひ上のページをご覧になって「どこが、そして何が問題だと REDが主張しているのか」を教えてくださ〜い。
RED社は、訴訟好きな… もとへ。「自社の開発した知財(特許やデザイン)を不退転の覚悟で守るメーカー」として有名です。
一昨年9月末、REDは Arri社と当時同社の開発担当副社長だったMichel Bravin という人物を相手取って訴訟を起こしました。この事件は、もともと BandProという全米一のプロ機材ディーラーにいた Bravin氏が、BandPro代表のメールアカウント情報を使い、RED Jannard総帥の私信を傍受。当時まだ発表前だった Epicに関する情報を不正に入手し、Arri社のマーケティングに利用した、という企業スパイ事件でした。
▶ REDとARRIが醜い戦争に突入か…?
Bravin氏は早々に有罪を認め、禁固刑+罰金刑に処されましたが、REDはその後、『Arri社は事前に Bravin氏の不正を知りながら、自社利益のために情報を悪用した』として Arri社を追訴し、ドロ沼へとダイブしていきます。
▶ NoFilm School : Camera Wars on Another Front: RED Sues ARRI After Being Hacked by Former Executive
REDは… というか Jannard総帥はその後も昨年5月にはあの Zacuto社を訴える!と息巻いた末に、やっぱりやめました(笑)。この時のご乱心は、Zacutoが実施したカメラテスト「Revenge of the Great Camera Shootout 2012」において『RED社のカメラが不当に貶められた』からで(笑)、一時は自分たち主催で正式なカメラテストを別途開催する!とまで言い出したものの、訴訟と一緒にこちらも取りやめになりました(爆)。
▶ RED、今度は Zacutoに宣戦布告!
さらにその後(もう、うちでは採り上げませんでしたが)、6月末には Wooden Camera社と同社がリリースした Scarlet、Epic用ケージ、Vマウントプレートなどの製品を「デザイン盗用」のかどで訴えます。これはまぁ、製品の目的と形状を見れば納得できなくもないですが、まさか Wooden Cameraのような零細メーカーを訴えるとはっ!と、業界に衝撃が走りました。
▶ Cinescopophilia : RED Sues Wooden Camera Over Patent Infringements, Sunglasses & More
左:WoodenCamera Wooden Camera Nato Cage 4 Arm/右:RED Tactical Rib Cage
ところで、上述した2年前の企業スパイ事件に端を発する Arri社とのドロ沼訴訟が、つい先週 2月10日にようやく終結しました。結果は「控訴棄却」。つまり賠償もなければ勝者もなし。REDも Arriも互いに自腹を切って訴訟費用を払って退場し、以降本件に関する追訴を認めない、ということです。
▶ Cinescopophilia : RED Vs ARRI Inc Micheal Bravin Court Case Settled Dismissed With Prejudice
▶ NoFilm School : RED Sues Arri (No One Wins). Now They Have Sights Set on Sony and the F65, F55, and F5 Cameras
この一年半に及ぶ長期戦の末の控訴棄却という事態は、どう考えても REDの(Jannard総帥の)お気に召さなかったに違いありません。昨日開示された対 Sony訴訟ではさっそく戦術を変えてきました。曰く、今回は判事による審理(Judge Trial)ではなく、陪審員による審理(Jury Trial)を求める、と云うのです。(^_^;)
あとは笑顔に白い歯のよく似合う快活で有能な弁護士を雇い、陪審員裁判では人心にアピールしやすい「大企業(Sony)=悪」という図式を確立できれば、「逆転裁判」を地で行くアッ!と驚く法廷ドラマが現出するに違いありません!(いや違うっしょ…)
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7 Comments
REDは軍との繋がりが深いので、その辺をPRできれば、運良く陪審員が保守系の人に当たった場合には勝てると踏んでいるのかも知れませんね。
でも、本当に争点が見えない。。。
運良くって…(笑)。12人の陪審員は日本の「裁判員」とは違い、ランダム選出ではありません。双方の弁護士が、候補者一人一人の人柄からバックグラウンドまで徹底的にを調べ上げた上で、面接インタビューを経てある程度以上「選べます」から…。というか、当然それだからこその陪審員裁判の選択なんだと思いますよー。
あれ?民事訴訟もそうなんですか!
米国で裁判起こしたことがないもので(^^;
それはなんというか、大問題のシステムですね。。。
あれ? 民事訴訟と刑事訴訟では陪審員の選出方法も違うんですか? いや実は、今まで見続けてきたアメリカの法廷 TVドラマから得た「知ったか情報」で書いちゃいまいた。あいすみません。。。
よくわかんなかったんですけど、御大raitankさんの解説でなんとなくは理解できたようなできないような ww 総帥は喧嘩っ早いのは理解できました。だからREDのデザインもミリタリーテイストなんでしょうかね? ww
「だから」ってこともないんでしょうけど(笑)、ミリタリー系は必然的かつ合目的的に効率と合理主義の権化ですからね〜。ミッションクリティカルな撮影の現場にも役立つヒントが沢山あるってことなんでしょう。「Picatinny Rail」とかね(笑)。
▶ TKYSSTD : 納豆すわっとぴかてぃにー[NATO,SWAT,PICATINNY]
そうですねぇ。
考えたらarriもZeissもナチスに恩恵を受けていたわけだし、ニコンも光学兵器屋さんですし 映像機器(スチールも)の歴史は軍事、戦争とは切り離せないですね。
にしても、訴訟はいかになるのでしょうかww