昨年の3月、PRONEWSさんに連載中の「raitank fountain」で『「ドラゴン・タトゥーの女」のデジタル4Kワークフロー』と題して、最先端のオールデジタル映像制作環境についてご紹介しました。
▶ [raitank fountain]Vol.04 「ドラゴン・タトゥーの女」のデジタル4Kワークフロー
大の RED好きとして知られるデビッド・フィンチャー監督及び “フィンチャー組” の皆さんが如何にしてその日の撮影データ、通称「デイリー」を即時共有しているか?
極寒のスウェーデンで撮影中の現場スタッフ、ロスのポスプロや編集施設で、順次空輸されてくる撮影データ入り SSDの到着を待つ編集スタッフ。“世界一ビッグバジェットな現場” で、彼らが撮影後ただちに全ての撮影データを共有していたその舞台裏で動いていたのは、実は無料の iTunes+Podcastを活用したソリューションだった!というお話でした。
以下、昨年自分が書いた文章を一部引用してみましょう(なんかヘンな感じ)。
「ドラゴン・タトゥーの女」は全篇、冬のスェーデンでロケ撮影されたそうですが、撮影が終わったデータは、その場で即時、二種類のデータにエンコードされました。一つはオフライン編集用で、1920x1080の ProRes LT。そして、もう一つはデイリー(確認)用で、こちらは 720pのH.264ファイルにエンコードされました。
(中略)
この関係者確認用に H.264形式に変換された軽量データは、エンコードが終わった順に iTunesに登録され、現場の関係者、そしてロスの Light iron社の編集担当者に”Podcast配信された”のだそうです。こうすることで、フィンチャー監督以下、遠く離れたロスにいるスタッフに至るまで、撮影データはその日のうちに関係者全員で共有されました。
この記事では話の本筋が 4Kシネマのワークフローであり “デイリーの扱い” は全体の一部でしかなかったため、サラッと流して書いていますが(笑)、「その場で即時、二種類のデータにエンコード」や「エンコードが終わった順に iTunesに登録」や「Podcast配信」は、もちろん現場の専任スタッフが “逐次、手作業で” 行っていたはずです。
あれから1年。そのデイリーの共有に特化したツールが登場しましたよ!もはや、iTunesや Podcastを使う必要すらなくなっちゃいましたよ!(ただし、幾ばくかお金がかかりますがー(笑))というのが、今回のお話。
▶ Cinescopophilia : Drylab Dailies Tools Allows You To Start Watching Dailies Again
DPや DITなど、映像業界に属する仲間たちが集まって興したノルウェーの映像ソフト開発会社、Drylab R&D。“自分たちが欲しいソリューションを作る” がモットーの彼らが今回リリースしたのは、3つの連携するコンポーネントからなるオンセット/ローカルの「デイリー共有システム」。
▶ Drylab R&D : Dailies
3つのコンポーネントの内訳は以下の通り。
• Keyframe Cam Report $29.99(約¥2,800)| iPhoneアプリ
▶ iTunes Preview : Keyframe Cam Report
日時や場所、シーンやテイクなどのカメラレポートを作成するiPhoneアプリ。RED、Arri、Canonの各標準ファイル名規則に対応(SONYは?)。記録されたカメラレポートは、そのまま後工程で「メタデータ」としてデイリーデータに埋め込まれる。ワークフローの中で唯一、“人力” に頼る部分。
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• Dailies Creator $349.99(約¥33,000)| Macアプリ
▶ Mac App Store Preview : Dailies Creator
デイリー共有ワークフローの司令塔的ソフト。撮影済みデータをドラッグ&ドロップすると自動的にカメラレポートをメタデータとして埋め込み、H.264のデイリー・ムービーを生成。オンセットのペアリングされた iPadに配信すると同時に、Dropboxのクローズドアカウントにアップロードして、オフセットのスタッフと共有(ただし読み込みが QuickTimeムービーのみなので、Alexa以外の撮影データは読み込み前に別途フォーマット変換が必要)。
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• Dailies Viewer $69.99(約¥6,600)・・・ iPadアプリ
▶ iTunes Preview : Dailies Viewer
AES-128bitのセキュリティ環境下で Dailies Creatorから配信されてきたデイリー映像を視聴するためのビューワーアプリ。この Dailies Viewerを介して出力を AppleTVへワイヤレス転送することで、大画面 TVモニターでデイリーを確認することも可能。
映像の「デジタル化」というと、昨年来ご紹介してきた「Side by Side」ではありませんが、ついつい「フィルムで撮るか? SDカードに記録するか?」のような、云うなれば “表舞台” の話に終始してしまいがちです。ですが、本当はきっとこの「デイリー」のような、100年前から続いてきた “舞台裏のシステム” をいかに上手に取り込み、より便利で効率的なワークフローにすり替えていけるか?が、映像業界全体のデジタル化を加速させる鍵になるのだと思います。
iPhoneと Macと iPadをすべて活用し、仕上げは AppleTV経由でねっ! …と、なにやら Apple社の御用ソフトのような体裁であることと、3つのコンポーネントそれぞれが微妙にお高い値札を下げていることが少々気になりますが(せめてビューワーソフトは無料でいいですよねぇ?)、方向はこういう事だよな?という確認のために。
21 Comments
『ドラゴン・タトゥーの女』は4K上映もしたんですか?
観ましたが日本ではもちろん2Kでした。
デイリーがデイリー(即日)になるのは素晴らしいですよね!翌日には撮影を修正できるのは効率的です。
film時代のデイリーは日本では翌日の夜でしたよね。ニューラッシュと言っていたかもしれませんが。
何で読んだか忘れましたが、最近ではハリウッド映画(の一部でしょうが)では4K解像度のデイリー・ラッシュをしているようです。4Kプロジェクターやモニターを撮影現場や現場付近に持ち込んでチェックしているようです。
raitankさん11トン車に機材をセットして4Kデイリー上映&カラグレ車を作ってみてはいかがでしょうか?たまに借りますww
「ドラゴンタトゥーの女」、4K上映はしていないと思います。というかハリウッド辺りでは、もう4Kシネコンとかってあるんでしたっけ?(実は知らない(爆))
今や撮影現場で 4Kデイリーっすかぁ。なるほど〜。一昨年、一部の進んだプロジェクトで採用されていたワークフローが今では “普通” になっており、その一昨年の最先端がこうして iOSアプリになって一般レベルに降りてくる。かくして映像業界は留まることなく進化を続けるのじゃ!って感じでしょうか(笑)。4Kデイリー&カラグレ車、日本じゃ出動回数が年に数回って感じで商売にならないんでしょうねぇ…。(^_^;)
シネコンでもあると思いますよ。
ご参照:http://pro.sony.com/bbsc/ssr/mkt-digitalcinema/resource.latest.bbsccms-assets-mkt-digicinema-latest-webapp4ktheatregmap.shtml
変化(進化)を楽しまなきゃですよね!
しかし、昨年は4K仕上げとかもやりましたが、今のところ、今年はHDTV仕上げですww
げげげ。大変失礼しました。灯台もと暗し。東京にもすでに有楽町、渋谷、六本木にあるのですね。っていうか、ヒルズシネマなんてしょっちゅう行ってるけど、4Kシアターだって知らなかった!(恥)
Pronewsの記事にも書きましたが、4Kデイリーは、日本でも始まってますね。
今はものすごく軽い機材でいいので、ワンカット単位で現場でラッシュ出しているようです。驚きです。うちはまだ4Kモニタ買ってないのでそこまではできませんが、確かに、後はモニタさえ買えば出来ますね。
Canonの4Kモニタが面積あたりのピクセル数を数えたらどうもフル4Kっぽいので、アレの市販化に期待しています。
あらまー、これまた灯台もと暗しでしたか。失礼しました。ボクはもう〜目を通す情報が海外発信のものばかりで、しかも日本の現場とか全然知らないし!で、その辺りはこうしてフォローして頂いて本当に助かってます!ありがとうございます。(^_^)v
いえ、記事の納品は結構前(月島イベント直後)だったので、実はこのエントリーとはたまたま偶然の一致です(^^;
こうやって各方面から同時多発的に4Kデイリーに触れるというのは、やはり、必要があると言うことですよ。
おぉ、そうだったんですか。このソフト群のリリースを見た時に、「うんうん。そうそう。方向はこっち」と思ったんですが、そういう時に直感を肯定補強してくれるシンクロニシティが起こるのは嬉しいですね。(^_^)v
日本では、対応シアターはあるんですけど、4K上映はほとんどしてません。そもそもが2KUPの映画が多いですし、4KUPのも2Kで送られてくるし、サーバーが2Kの場合も多いです。
今日も今日とて(4Kじゃない)豊島園シネマへ行ってましたー。昨日封切られた「ダイハード5」。マクレーンがもう全然「運の悪い男」ではなくなっちまって…。っていうか、Bウィリス単なる爺さまで…(泣)。でもエンドクレジット見たら、未だに Fujifilmって。ビックリ。ただちょっと粗くて雑なシネマトグラフィが。やっぱダイハードの監督はマクティアナンじゃないとなー。。。
…で、4Kを4Kで見せてくれる劇場ってないんですかね? あ、劇場の問題じゃなくてソフトの問題か。
このデイリー処理はいいですね!
とりあえずのところはモバイルデイリーを目指しているので、これは便利そうです。
デイリー処理専門にうん百万のソフトや環境とか、非現実的ですしね。
そういえば、REDがSONYを民事訴訟しましたね。
技術資料を読んでもアンテナ以外はどこが争点か良く話からないので、この辺のエントリーも期待しております!
はあ、ボクも特許1件につき30ページ近くある技術資料に目を通したんですけど、「RGBセンサーの配列」と「デ・モザイク処理」に関することであること以外、どこが争点なんだかサッパリでした。(^_^;) 海外サイトのどこかで解説記事が出るのを待とうかな?と(笑)。
そうなんですよね。まずは、スッと導入できる敷居の低さが重要だと思います。ただ、今日び、iPhone、iPadはまぁ仕方ないとして、中核の Dailies Creatorはクロスプラットフォームで動くようにしとかないとダメじゃないっすかね〜?
技術資料自体は比較的楽にたどり着けたんですが、どこがF55シリーズと同じなのかが見えてこないんですよね。
でもまあ、英語と技術の達人raitankさんがわからないんじゃ、私にわかるわけがないですね(^^;
デイリー処理は、日本では当面手作業なんでしょうけれど、フォルダに放り込んで置いたら勝手にコンピュータがやってくれる、ってところくらいまでにはしたいですよね。
いえ、ボクのへっぽこ英語は相当怪しい上に、ああいった技術資料は今まで読んだことがないので全く自信ないです。ていうか、F5、F55はわかるとして、F65まで対象に入ってるっていうのがなぞ〜。
SONY提訴は、当たればラッキーぐらいな牽制球な気がします・・・。
でもF55の形やコンセプトはREDまんまなんで、法律上は判りませんがREDにしたらパクったな!って感じはあるかと。この程度の「拝借して改良」は高度成長期の日本だと日常茶飯事でしたが。
F55、F5だけだったら、ボクも『あのカタチはなぁ…』って、すぐに納得できたんですけどね(笑)。なぜ、F65まで??というのがフシギで。ま、でも仰る通り「当たればラッキー」系の訴訟の確率が高いのでしょうね。なによりも「今回は陪審員制でっ!」って注文つけてるあたりが、なにをか云わんや… と(笑)。
確かに、陪審員制ってあたりが、こう、色々と感じるものがありますよね(^^;
そうそう、人力スタートなんですよね。
もう少し進化したら自動化できそうですけどね!
しかし、連携してますね。Apple連携(笑)
FCP-Xの強力な「キーワード」機能も、やっぱり最初は人力入力ってところがアレですよねぇ(笑)。スチルの方は「顔認識」ができるようになってタグ付けもいくぶん自動化できるようになりましたけど、それでもやはり「これから」といったところでしょうか。
Apple各製品との連携っぷりは、尋常ではないですよねぇ。いっそ Appleから出てもおかしくないくらいのもんで… (^_^;)