当初7月に発売開始される旨、予告されていた Blackmagic Cinema Camera(以下、BMCC)は、その後、何度も出荷遅延が続き、「ホントに出荷すんの〜?」と、心配になり始めた矢先の8月30日、ようやく本格的に出荷が開始されたようです(ほっ)。
と・こ・ろ・が。一説によると日本に届いた初回ロットはたったの2台(はっ?(゚Д゚;))。別の説では4台。いずれによせ、一桁台だったと云うんですけど、実際のところどうだったのでしょうか。
あんまり少なすぎて店頭に並べるデモ機もない! …と聞いた割には、中野の Fujiya AVICさんだとか、あるいは System5さんだとか、普通に店頭デモ機を出しているようで、つまりは “情報が思いっきり錯綜” しています。w
当然ボクもまだ未入手ですし、手に入るのは年明けくらい?と、すでに諦めモード全開。ただ、はやる気持ちはあるものの、同時に「別に数ヶ月先でもいっか?」という気もしておりまして。なんとなれば、ここしばらく撮影以外の仕事が忙しく、ブログの更新もままならないから。
お!と思うニュースを見つけ、ブックマークする ➡ 記事を作る時間がな〜い! ➡ 鮮度、落ちていく… ➡ そのままお蔵入り(泣)
ここ2ヶ月、ずっとこのパターンが続いていて、まだ当分続きそうな気配。それならいっそ BMCCなんて届かない方がストレスにならなくていいかもネ?という後ろ向きの理由(…と書いてたら悲しくなってきた(泣))。
というわけで、まだしばらく実機にはさわれそうもないので、次善の策として(?)、すでに BMCCをいじっている人、撮影している人の情報で予習を続けましょう。
まずは、ネットからダウンロードできる BMCCのRAWデータ(Cinema DNG形式)のお話。もうかれこれ10日ほど前になりますが、BMCC開発初期からプロジェクトに参加してきたオーストラリア人 DP、John Brawley氏が BMCCの RAWデータを公開して下さいました。以来、この同じデータをダウンロードした人たちが Resolveや SpeedGradeや Lightroomや Colorを使って自らグレーディングした「マイ・バージョン」を競って Vimeoにアップロードする “祭り” が続いていましたが、ご存知でしょうか?
以下が、John Brawley氏のオリジナル。
▶ Shot 1 RAW Files
▶ Shot 2 RAW Files
▶ Shot 3 RAW Files
▶ Shot 4 RAW Files
▶ Shot 5 RAW Files
ついでに、Blackmagic Design社のサイトからダウンロードできるグレーディングソフトの決定版、Resolve 9 Liteはこちら。
▶ Blackmagic DaVinci Resolve 9 Lite Beta – OSX
▶ Blackmagic DaVinci Resolve 9 Lite Beta – Windows
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続いて、Blackmagic Design社から BMCCのテストを依頼された Frank Glencairnさんというドイツ人DP兼 Visual Effectアーティストの方が行った、低照度下におけるFS-100との比較テスト映像。どちらのカメラにも同じ Samyang 35mm f/1.4をつけ、f/2.8まで絞り、Heliopanの IR/UVフィルターをつけて撮影したそうです。
近代的なビデオカメラである FS-100はもともと暗さに強いことが売りでしたし、何もしなくても自動である程度のノイズ・リダクションが効いているようで、ノイズは出ているものの滑らかな印象。対する BMCCの方は、本体内にノイズ・リダクションの回路がないそうです(笑)。RAWという名の通り、素のまま。しかも、ISOは最大1600までという素っ気なさ。小さなセンサーサイズと相まって、お世辞にも暗さに強いとは云えません。ですが… このノイズの感じ、ボクは嫌いではありません。
▶ Frank Glencairn : First Hands on the Blackmagic Cinema Camera – Test Diary
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最後に、やはりすでに BMCCを入手し、しばらく使っておられたらしい Vincent Laforet氏による BMCC評から幾つかコメントをご紹介しましょう。というのも、こうした βユーザーによるカメラのインプレッション記事にしては珍しく、氏はかなり本格的に本機をディスる論評を書いておられるのです。
▶ VINCENT | LAFORET : Black Magic Cinema Camera (BMCC) Beautiful & Befuddling
…I think that this camera produces one of the most beautiful images in the cinema/video market.
このカメラは現在のシネマ/ビデオ市場の中で、もっとも美しい映像を産み出すカメラの一つであると思う。
…としながらも、「“Beautiful, and Befuddling.”(美しい。けれど、まごつく)」と評して、以下、なにに “まごつく” のか?長い長いエントリーで説明しています。ここではディテールを省き、氏が指摘している BMCCの至らない点をまとめてみましょう。
• リグなしでは(箱から出しただけでは)使えないカメラである
• ハンドヘルドで手を添える場所に困る筐体デザイン
• 持ちづらいだけでなく、予想外に重い本体
• 晴天の戸外では、まったく役に立たない背面の液晶
• 90分しか保たない上に、交換不能な内蔵バッテリー
• 人間工学的に間違っている RECスタート/ストップ・ボタン
• カメラ本体内で SSDが初期化できない(Macが必要)
• 小さすぎるセンサー+EFマウントでは広角レンズがない
• 絞り値の上げ下げはできるものの、「f値」表示が出ない
• ISレンズのスタビライザーが効かない(100mm MacroII)
• 30fpsまでしかないフレームレート
• 編集し辛い Cinema DNG RAW(皆、ProResで撮るのだろう)
• フルHDよりは広いが、あまり使いでがあるとは云えない2.5K解像度
特にバッテリーの保ちの悪さには心底、辟易したらしい Laforet氏は、
I am sad to report I missed several gorgeous shots in Australia and New Zealand this past week because either a. the battery died or b. I was too busy constantly turning the camera off to preserve battery and therefore missing key moments.
先週訪れたオーストラリアとニュージーランドでは、幾つか最高の瞬間を撮りそびれてしまった。原因は「バッテリーがなくなったから」か、あるいは「バッテリーの保ちを気にして頻繁に電源を落としていたから」である。
…と、憤懣やるかたないコメントを記しています。
氏の指摘している BMCCの欠点は、NABでの本機発表以来、すでに “誰でも知っていること” ではあります。それでも、Philip Bloom氏や Andrew Reid氏ほか、海外のαブロガーの皆さんが軒並み諸手を挙げて大絶賛している時に、ただ一人、『僕は Blackmagic Design社が必ず出すに違いない、「スーパー35mmセンサー」と「交換可能なバッテリー」、「ホールドしやすい筐体」と「充実したフレームレート・オプション」を備えた第二弾に期待したい』と正直に記している Vincent Laforet氏には敬意を表したいと思いました(もっとも、P.Bloom氏が大絶賛するのは、いわばお約束。基本的にどこのカメラでも絶賛する “カメラ好き” なんですけどねww)。
15 Comments
はじめまして。日頃からブログを愛読させてもらっているしがないサラリーマンディレクターです。一昨日system5でキャノンのシネレンズを装着したBMCCの実機を触ってきました。背面の液晶からでも十分に確認できる滑らかな質感の映像は、横並びに展示されたSony,Canonnの大判センサーカメラとは一線を画するものだと確信できるほどのものでした。でもそれ以上に印象が大きかったのは、筐体のデザインです。デモ機を三脚から外した途端に感じた想像以上の違和感に、これほどまでに手の置き場のないカメラって無かったんじゃないか、と感じました。普段の仕事では、自分としては、周辺機器含め、このカメラをワンマンオペレーションする運用のパターンがある程度出揃ったところで再検討します。
POP1280さん、はじめまして!(^_^)v さわってこられたのですね、BMCC。「これほどまでに手の置き場のないカメラ」って、もうまさに Vincent Laforetさんが書かれていた通りですね(笑)。やはりリグが必須ってことなんでしょうねぇ〜。φ(.. ) メモメモ
ようやく出荷が始まって、実際に撮影する人が増えてくると、次は編集環境の問題が露呈するんだろうな… というのがボクの読みです。Adobeの CinemaDNGって、現状ほとんど編集ソリューションが見当たらないんですよね、実際のところ。。。
楽しく読ませて頂いています。DaVinciを導入予定の自分としてはカメラごと買うか…
てな感じですが、広角がきびしいにせよ制作が「これで全然良いじゃん!」てなことになると、さらに機材で稼げね〜になっていくのが目に浮かぶこのご時世…内容やバジェットに見合う機材選択といっても、ここまでくると「なんだかな〜」てな感じでございます。
若いクリエイターさんにはとっても追い風で、高額な機材を動かして来た世代には、
ハリケーン並みですが、ハイエンドが存在する限り、自覚が中々持てません…
どの機材持って来てもそれなりな作品がつくれまけどね〜
ここを楽しめるかどうかが分かれ道かと。このBlogのみなさんは純粋に楽しそうで、読んでいて映像に向かう気持ちもリフレッシュできます…から寝ないでもたくさん更新してくださいね?…というのは冗談ですがいつもありがとうございます。
halさん、こんにちは。(^_^)v
そうなんですよね。ボクの BMCCへの興味は半分がRAW、残りの半分が DaVinciだったりします。
そういえば先日、「高額な機材を動かして来た世代」の先輩のかたとお話ししておりましたら、なにか話がかみ合ってなくて。よくよく伺ってみたら、その先輩には『機材を買う』という概念がないようでした(笑)。え?だって機材は撮影する内容と予算に応じて、レンズともども保険かけて借りてくるもんだろ?オマエ、って。
この辺が若い世代は真逆で、PCでもカメラでも、機材といったらレンズでもジブでも、自分の手足となる道具=常に座右にある自分のもの、という意識が強い気がします。まさに過渡期なんですね。。。
> 寝ないでもたくさん更新してくださいね?
うひょ〜。有り難うございます&頑張ります!(◎_◎;)
自分もスーパー35mmセンサーのBMCCに期待しています!
このカメラなら、将来「スーパー35mm版」が出ても、初号はそのままBカメとしてキープできるに違いない(=捨てなくて済む)。ボクはそう踏んで最初から突っ込むことに決めました!(笑)
ロング用のカメラにすれば最適です!
こんにちは!
お一人、FBで届いた方が居らっしゃいますね。
と言う事は、REDのスカーレットよりも断然早く
発注者の手元に届いたのは事実ですから、
raitankさんも「待てば海路の日和あり、ってなもんよ!」
とカンラカンラと高笑いされてくださいませね(^_^)
後者人間ギャー撮るズより。
待てば海路の日和あり。いいですねぇ。なかなか人間ができていないもので、すぐ早く!早く!とジレますが、まぁでもラーメン屋とか絶対並ばない自分としては、みんなが欲しがって在庫がない間はいらねぇや!って、わざとソッポ向いてみたりして… って、つまり単なるへそ曲がりですかそうですか。
今春から待ちこがれていたBMCCネタ、市場投入後一発目が初回ロットの少なさ!いや〜、ますます楽しみになって来ました(笑)
やはり国内外に限らずNAB会場で予約を入れた方々なんですかね、最初に手にされているのは。
「raitankさんのレビュー読んでAmazonで買おっと」なんてノンビリ考えていたのはボクだけかしらん….Amazonで買えるのはいつになる事やら。
対FS100との暗部比較映像、興味深かったです!BMCC ISO800 RAWでの肌の質感や奥の炎周りを見た瞬間に「う〜、欲し〜!」と思わず唸ってしまいました。
実機触ってみたいものです!(平日中野行こうかな)
そうでした! Amazonも正式な取り扱い代理店に入ってますものねぇ? ひょっとしてアメリカと太いパイプがある Amazonは別枠で初回ロットを持っていたりして。…と思って今覗いてみましたけど、影も形もありませんな。(^_^;)
そしてボクは実機に触れるのが怖いです。今のところ写真とレビューだけ見て「ふん。潤沢に流通するまで要らねーよ?」とか云ってますが、実際にさわったら… と思うと、怖くて中野にも神田にも近づけませぬ。
いえ「管理人であるraitankの興味ありき」、全くその通りです。難癖をつけて申し訳ありませんでした。
ただSSD収録というのは自分としてはかなり先のステージのような気がして、raitankさんの記事のファンとしてまだまだDSLR/1080p収録といった情報が知りたいなと思った次第です。
コメント欄を荒らして申し訳ありませんでした。失礼します
そういう意味では今年は本当に怒濤の一年なんですよねぇ。なんてったって昨年までは、採り上げるべきカメラが 5D MarkIIと、GH2しかありませんでしたから(笑)。今年は年明け早々からラージセンサーカメラ、4Kカメラ、シネマカメラと目まぐるしいばかりの百花繚乱で…。
でも、K-Swissさんにも変わらず楽しんで頂けるよう、多彩な記事作りに配慮しようと思います。今後ともどうかご贔屓にっ!(^_^)v
僕はこのカメラが嫌いです。
なぜなら、この奇天烈な仕様でしか発生しない取り越し苦労によって、僕の大好きなraitank blogが汚染されるからです。
もちろんraitankさんによるグレーディングのTipsやDaVinci Resolveの話は聞きたいですが
それは誰でも使ってるDSLRで撮影したものであってほしいというのが願望です。
こういう変なクレームがつくのは、このブログのファンでプロ機を使わない人が大勢いるという証拠です。
このカメラは、画期的な低コストによって業務用撮影機に風穴を開けたというよりも、僕の目には2008年の春頃、CanonHV20に無理矢理つけてたDOFアダプターのように見えます。
う〜む。なにやら、誉められてるのか?ディスられてるのか?にわかにはわからない複雑なコメント、どうもありがとうございます。
raitank blogを好きでいて下さる読者の方には、大きく2種類の人がいるようです。「一眼ムービー関連の情報が欲しい人」と「raitankフィルターを通して見た一眼ムービー情報に興味がある人」です。ボクにとってはどちらも大切な読者様ですが、BMCC関連の記事を「汚染」という激烈な言葉を使って断じておられる K-Swissさんは、100%前者ということでしょうか?
ただ K-Swissさん。raitank blogは管理人である raitankが個人的に興味をもった事象に関して、学び、試し、知った情報や知識をご紹介する “個人ブログ” なんです。つまり、純粋なる情報サイト、ニュースサイトのつもりはさらさらなく、まず初めに 管理人であるraitankの興味ありき!で運営しています(そうでないと続けられないです)。
なので、できれば、K-Swissさんにも後者の読者となって頂けたら… 純粋なる情報、ニュースに関しては他サイト様を見て頂くとして、ボクの見るもの聞くもの試すものを「アホやなぁ〜」と見守って頂けたら… と願わずにはいられません。
本当はもっと更新頻度を上げて幅広い内容の記事を公開することで、相対的な “汚染度” を下げられれば良いのですが、あいにくまだ暫くはサイト更新に割ける時間を増やせそうになくて…。そこに関してはお詫びします。早いはなし、このサイト自体を収益化できれば、他の仕事をやめられるんですけどねぇ〜(笑)。