[raitank fountain extra]Shoot.01 raitank的 EOS C300インプレッション

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※ 本記事は PRONEWS連載コラム「raitank fountain」に、2012年1月11日「[raitank fountain extra]Shoot.01 raitank的 EOS C300インプレッション」として掲載された原稿を再録したものです。

2012年。皆様、あけましておめでとうございます! raitankです。ただ今、ひたすら頬の筋肉がだらしなくゆるんでおります。だって皆さん、今ボクの手の中には、あの EOS C300があるんですっ!(笑)

■ EOS C300と年越しする

EOS C300がボクの手もとにあります。ほどよいサイズと重さ。何年も使いこんだ 5D MarkIIから持ち替えても、大して違和感はありま… いやぁ、これはウソですね。なんとも形容の難しい独自のカタチをした C300は、いきなり裸で手渡されたら、一瞬どこを支えて持てば良いのか、まごつきます。



たいていの工業製品には、ひと目見ただけで機能を想起させる形状といったものがありますが、ハンドルやレンズを未装着の EOS C300を観察しても、これが『映像を撮る道具である』ということがわかるヒントはどこにも見当たりません(笑)。…ただ正直なところ、それは 5D MarkIIでも同じなんですよね。旧来通りのスチルカメラのカタチをまとった EOSで動画を撮ることの不条理、滑稽さは、なにも “アンチ一眼ムービー派” の声を待つまでもなく、シンパのユーザー自らが一番よく知っているのですから。

そこへ、このなんとも不思議な… 一眼レフではなく、かといってビデオカメラでもなく、更には REDが提唱し、のちに SONYが FS-100で継承した “ブリック・モジュラー・スタイル” ともまた違う、全く新しいカタチをぶつけてきた Canonのデザイナー様に、まずは敬意を表したいと思います。



全2回を予定している本レビュー記事では、C300のこの新しいカタチが身体に馴染んだ時に見えてくるものを考察するほど一緒にいられるわけではありません。ですが、ちょうど年末・年始にからめて貸し出し期間を設定して頂けたおかげで、なんと二週間もの長きに渡って使い倒すことが許されました。また、『いわゆるタイアップ記事ではないので、歯に衣着せずなんでも思った通りに書いてください』とのお墨付きも頂戴しています(笑)。

というわけで、目で愛でて、それから撫でて… と文字どおり “カタチから入った” 後は、さっそく C300の基本的な性能の把握から入っていくことにしましょう。


■ 改めて、C300とは?

11月3日の発表以来、ボクが見聞きした様々な情報から得ている EOS C300というカメラの概要は、

“2010年6月に登場した 4:2:2 ファイルベース業務用機 XF300(XF305)に、新開発スーパー35mmサイズの CMOS 4Kラージセンサーを搭載し、PLマウント、EFマウントのレンズを使えるようにした上で Cinema EOSの冠を付加したプロ用ビデオカメラ”

といった感じでしょうか。

海の向こうの業界誌「Film and Digital Times」誌上で公開された C300の開発責任者、真栄田雅也氏のインタビューによれば、C300は、それまで社内の別々の部隊によって個別に開発が進められてきた業務用ビデオカメラと一眼レフカメラのチームが初めて一緒になって開発された機種だそうです。
Jon Fauer’s Film and Digital Times Issue 45 : Canon’s Managing Director Masaya Maeda

…とはいえ、こうして完成した C300を前にすると、一眼レフカメラである EOSの痕跡はどこにも見当たりません。強いて挙げれば、本体側面に取り付けることができるハンドグリップはとても EOS的… というか、一眼レフカメラっぽいカタチをしています。



でも、ざっと見たところ、筐体にも、あるいはメニュー項目にも、他に EOSらしさを感じる部分はほとんどありません。

たとえば「感度」は一眼レフのような「ISO表示」とビデオカメラのような「ゲイン表示」を切り替えて使うことができますが、EOS動画のユーザーとしては、そんな表層のインターフェイスではなく画調のカーブを自作できる「ピクチャースタイル」機能をこそ、ぜひ移植しておいて欲しかったのですが…。



反対側から見ると、ビデオカメラである XF300に備わっている機能は、「NDフィルター」から「ゼブラ」、あるいは視認性の高い「ウェーブフォーム・モニター」まで、一通りすべて揃っていることがわかります。



つまり C300は、Cinema「EOS」という冠を戴いてはいるものの、その素性はれっきとした「ビデオカメラ」であり、一眼ムービーの進化形では全くないばかりか、そもそもそれを代替するモノとしては設計されていないことが強く感じられるのでした。

そして、この部分の受け止め方は、個々のユーザーの立ち位置によってハッキリと二分されるのだと思います。ボクのような一眼ムービー派の側からのアプローチでは、極端なはなし「あ!これはボクの道具ではない…」ということにもなるでしょうし、逆に昨今の一眼ムービーの台頭を大いなる違和感と共に眺めていた多くの方々にとっては「こういうモデルをこそ待っていた!」と喝采を持って受け入れられるに違いありません。

C300は一眼ムービーの親玉ではなく、ラージセンサーを搭載したビデオカメラなのだ」という所見は、外から見た時の印象だけではなく、出てくる絵にも大いに関係しています。

C300の絵は、EOS動画では頭痛の種だったモアレやエイリアシングとは無縁。ローリングシャッターもよく抑えこまれていて、それはそれは立派なものです。でも、同時に 5D MarkII をはじめとした、いわゆる一眼ムービー好きな者の目には、いささか旧来然としていて “ビデオ臭く” 感じられるのも事実。特に、油断するとハイ側の描写がすぐに “ビデオチックな絵” になってしまう事に、ボクなどは大いに違和感を覚えるのですが、これも上述の通り『ちゃんと “ビデオらしい” 絵を記録できるラージセンサー機』を求めていた皆さんにとっては、待望のカメラ!ということになるのでしょう。

C300の絵を “ビデオ臭い” と感じるか? はたまた “ビデオらしい” と感じるか? そこがこのカメラを評価する際の分岐点になると思いました。



…ちなみに、C300には「EOS Std.」というカスタム・ピクチャー(ピクチャースタイルに非ず)が用意されています。これは名称からして EOSの「スタンダード」ピクチャースタイルを模したカーブかと思われますが、EOSムービーのユーザーが動画撮影時に使う基本のピクチャースタイルは「ニュートラル」と昔から相場が決まっています。なぜことさらに誰も使わない「スタンダード」をプリセットにしたのか?理解に苦しみます。


■ C300のラチチュードを測る

…と、ボクが散文調の印象を書き連ねるのはこれくらいにして(笑)、今回はせっかくなので、日頃懇意にして頂いているプロカメラマン(撮影部)の金居明弘氏、映像作家の岩永 洋氏のお二人をお招きして、より実務的なテストをお願いしてみました。


● 金居さんのケージリグに収まった C300

金居さんは特に「最大12絞り分」と謳われている C300のラチチュードに興味津々。逆光の中に座ってもらったモデルさんを Canon-LOGで撮影するというキビシイ条件の下、測定したデータを元に C300の特性曲線を描き、また実際に12ストップをフルに使った撮影をテストしていただきました。

今回、この EOS C300と共に登場した「Canon-LOG」データは、すでに Web上で各国のテスター諸氏が指摘している通り、一見したところ「コレって本当に LOGなんですか?」と問いたくなるような、メリハリがあります(金居さんご提供のグラフに比較のために示されている Technicolor CineStyleのカーブと比べると、Canon LOGがどれくらい “締まっているか” おわかり頂けると思います)。


LOGデータといえばポスプロでグレーディングするのが前提であることは “常識” ですが、『そもそも 8-bitのデータなんて、カラコレしても破綻するだけでは?』という議論もあるくらいで、これなら敢えて「撮って出し」のまま繋いで完成!とする人も出てきそうですね。

raitankS08_CLOG_Incident



というわけで、のっけから大変厳しいテストを敢行された金居DPの所見はいかがなものでしょうか?

『待望の Canon製ラージセンサービデオカメラということで、基本的かつ当たり前の機能を手堅く押さえてきたなという感じですが、残念ながらそれ以上の “+アルファ” が希薄ですね。たとえば 5D MarkIIのような、ときにカメラが勝手にドキドキする画を紡ぎ出してくれる!というようなマジカルな魅力はなく、皆が驚くようなコスト・パフォーマンスの高さもありません。
特に悪いところは無いんだけど、自分で所有したいか?というと、う〜ん必要な時にレンタルできればいいかも?というのが正直な感想です』


<金居さんのその他のコメント>

➡ とても便利で見やすいウェーブフォーム・モニターだが、ビューファーには出力できず、液晶モニター上でしか見られないのはなぜ?
➡ 「カスタムピクチャー」は、EOSの「ピクチャースタイル」のようにユーザーが編集できるようにしてくれれば良かった。
➡ 100IRE以上をカットする機能が用意されているが、どちらかというとスーパーホワイトを100IRE内に圧縮してくれる機能が欲しかった。

それから、実は一つ問題が発生した事をご報告しておきます。

C300で撮影したデータは「Canon MXF」ファイル形式になりますが、MacOS(QuickTime)は MXF形式にネイティブ対応していないため、そのままでは編集はおろか、再生すらできません。そして今回お借りしたテスト機には、残念ながら専用ソフト等が入ったユーティリティ・ディスクが付属していませんでした。
そのため、Canon様のサイトから XF300用の「Canon XF Plugin for Final Cut Pro 1.1」というプラグインをダウンロードし、FinalCut Pro上から「ログと転送」コマンド経由でイントラコーデックである ProRes422形式へとトランスコードして読み込みました。

ところが。このやり方で読み込まれた ProRes422データは、なぜかオリジナルの Canon-LOGとは、見かけがかなり変わってしまいます。ざっと下の画像のような具合。似て非なるものと言った方が良いほど、明るさ、彩度、ガンマのすべてが違うのがお解り頂けるでしょうか(コレ、EOS の H.264データでも起こるんですよねぇ…(泣))。



また、インストールしたプラグインは、あくまで XF300(305)用のソフトであって、C300用ではありません。そのため、今回 C300から搭載された「23.976fpsではない、純粋な 24fps Progressive(24P)」モードをオンにして撮影したデータは認識してくれないという不具合も生じてしまいました。大変残念でした…。


■ ISO20000の世界へ

さて、続いてもう一人。自ら撮影部もこなす映像作家の岩永 洋さんは、なんといっても C300が誇る高感度特性をテストしてみたいとのことで、もうガクブルの寒さの深夜に向ヶ丘遊園駅に出かけ、忘年会帰りの酔客にビミョーに絡まれながら(笑)、ISO20000で線路のきらめきを撮影してみました。編集して頂いたので、そのまま掲載してみましょう。


岩永さんは、なんといっても脱着式のハンドグリップが気に入ったようです。特に液晶とトップハンドルを外した最小サイズの状態で、一眼レフのようにグリップを握りファインダーを覗いて行う撮影は、その他の業務用ハンドヘルド機ではついぞ味わったことがない新感覚!と絶賛しておられました。

以下、ご本人の弁。

『撮影データに関しては、ざっくりとした印象としてハイの描写があまり良くなかった。ディテールがないとかそういうことではなくて、描写の質感がかなりビデオライクな気がした。暗部の再現性がどこまであるのか?をしっかり探ってからになるが、相対的に暗めに撮った方が、あとあと良い質感を得ることができそうな予感。
でも、ISO 20000という感度での描写は、ただただ凄い!のひとこと。ノイズの具合がデジタルっぽくなく “粒状感” に近い。どうせなら 5D MarkIIや 7Dのように、写真もちゃんと撮れたらいいのに!と思ってしまいました。EOSの名を冠しているわけですし…(笑)』


また今回は、ちょうど岩永さんが Blackmagic Design社の UltraStudio 3Dを入手されたというので、これ幸いと(笑)、C300から外部レコーダーへの収録をテストさせてもらったのですが… 出てきた信号は、なぜか 60i。『いえいえ、そうじゃなくて 24pで収録したいんですけど〜?』と思ったのですが、マニュアルを確認すると、なんと驚いたことに C300の SDI出力は 59.94i 固定なのだそうで…。

これは、60iで収録したあとにリバーステレシネ的なことをして 24pに戻すよろし、という事なのでしょうか? もしそうだとしたら、それは一体なぜでしょう?ココには何かボクがまだ知らない “ポスプロの常識” とかがあるのでしょうか?(年末とて、どこかに問い合わせるワケにもいかず、未だ真相は藪の中。どなたかご存知でしたら教えてください)




■ 年明け早々、ロケ撮影に出かけます!

といった具合に各種のテストをして過ごした EOS C300との最初の一週間が終わり、今これを書いているのは、2011年最後の日、晦日の夜。あと数時間で新年が明けます。そして、元旦、二日と準備をしたら、今度は「raitank組」の仲間たちを誘って、3日、4日と二日間に渡ってロケ撮影に出かける計画を立てています。そのもようは、キッチリと作り込んだ上で「raitank的 EOS C300レビュー Vol.02」として、1月中旬頃に公開する予定です。どうか、ご期待ください!!

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