HDR(High Dynamic Range)写真はご存知ですよね?最近ではコンパクトカメラにもフツーにオプションとしてプリセットされていたり、あるいは iPhone をはじめとしたスマートフォン用に HDR アプリが出回ったりと、それなりに市民権を得ている(?) “れいのアレ” です。Flickr あたりで「HDR」で検索すると、この通り、いくらでも出てきます。⬇
漆黒の闇から、まばゆい陽光まで。写真とは光の明暗を記録したデータに他なりませんが、この明暗の差のことを “階調(ダイナミックレンジ)” といいます。この時、暗い部分のディテールが黒く潰れないよう階調を持ち上げ、同時に明るい部分のディテールが白く飛ばないよう階調を押し下げることで(=階調を圧縮することで)、あたかもダイナミックレンジが拡張されたかのように見せてくれるのが、HDR写真です。
一見してわかる通り、HDR 写真は非常に “不自然” です。私たちの眼が通常認識している景色とは違う、もう一つの現実の見方。それが HDR写真と言えるでしょう。
さて。では、この HDRの技法を使って、世界を動画で捉えたらどう見えるでしょう?
昨年の秋、米・西海岸の映像制作会社、 Soviet Montage が “EOS 5D MarkII で撮影した史上初の HDR 動画” と銘打って、上の動画を発表し、話題をさらいました。
「ええっ?一体どうやって撮ったの!?」という疑問に対し、制作者は明確な回答を与えてくれませんでしたが、どうやらレンズを通過した光を “ビームスプリッター” で二系統に分け、ハイ収録用とロー収録用、二通りの設定をした2台の 5D MarkII で撮影してから合成したようです。
…と、ココまでが予備知識で、今回は “Amp”(アンプ)というカメラについて。
Ampは米・ニューメキシコの Contrast Optical 社が開発した革命的に新しいリアルタイム HDR 動画カメラです。このカメラのキャッチフレーズは「There’s no f/stopping us!(fストップになど、ストップさせねぇ!)」(ダサッ!(泣))。そう、Ampが収録する動画は、なんと!最大17.5ストップものダイナミックレンジを実現しているのでした。
百聞は一見にしかず。まずは、その広大なダイナミックレンジを含んだ動画のサンプルを見ていただきましょう。
…う〜ん、微妙。 …というか、なんかバッチイ感じ?(笑)。
ココから先に進む前に予め言明しておきますと、一つ前のトピック Lytro の「撮影後にピントを調節する機能」と同様、実はこの「17.5ストップの HDR動画」も、ボクは個人的にはあまり感心していません(笑)。ただ、ほとんど同じタイミングで “今までにない革命的に新しいカメラ!” という触れ込みでニュースが流れてきたので、まぁ二つセットで採り上げるなら… と軽い出来心で(笑)。
冒頭でご紹介した Soviet Montage社の HDR動画は、ビームスプリッター+2台の 5D MarkII で収録されたと書きましたが、Ampには2個のビームスプリッターと3個の CMOS センサーが内蔵されています。現行のプロトタイプでは、センサーがそれぞれ4ストップのブラケット幅に調節されており、トータル17.5ストップのダイナミックレンジを実現していますが、最終的には最大20ストップまで持っていく計画だそうです。
このカメラが従来の HDRカメラと違う画期的なポイントその1は、ソフトによる後処理が不要で、リアルタイム収録ができること! …と謳われているのですが、リアルタイム収録の良否はケースバイケースですし、サンプルを見る限り、ひょっとすると “重ね” は後処理で調節できたほうがキレイな映像が作れそうな気もしないでもないですよねぇ…?(笑)。
そのほかの注目すべきポイントは… NikonFマウントの一眼レンズが使えること!、SSD に非圧縮 RAW データを記録すること!
といった感じでしょうか。現在のところ、どこを読んでも実際のところ、どういう形態の製品になるのか?そもそも販売されるのか?レンタルされるのか?それとも開発だけして、あとは他社に技術をライセンスするつもりなのか?ほか、まだ将来のビジョンが明らかではありません。ひょっとすると、今はまだ単なる “技術のお披露目” 段階なのかも知れませんね。
まぁ、そういう試みが進行しているという程度の情報として…。
【情報ソース】
▶ amp | Contrast Optical
▶ PhotoWeekly | AMP Real Time HDR Video Camera
▶ PetaPixel | AMP Camera Captures HDR Video in Real Time with One Lens and Three Sensors
▶ Fresh DV | AMP HDR Camera captures 17+ stops of dynamic range
6 Comments
私的には 後からピントカメラ よりこちらの方が惹かれますね。
過去にも似たようなコンセプトの 池上の四板式CCDビデオカメラ や スティールですが富士フィルムの S5Pro とかは実用機が市販されていましたが、なぜかみんな後継機も出ずにディスコンに・・・・・・・
そもそもフィルムも高感度粒子と低感度粒子をブレンドして・・・・・・ こちらもディスコン寸前?
実は世の中は広いDレンジなんか そんなに必要としてないのかも?
私はハンドリングが 未だ上手くいっていないだけ だと思うんですけど。
サンプル映像を見ても いわゆる(分かりやすい)誇張されたHDRですけど、これをグレーディングすれば可能性は広がる?
たとえば、冒頭でご紹介した Soviet Montageさんたちが作ったビデオは、そんなに違和感なく見ていられるんですよ。でも、この Ampのほうは、見ているあいだずっと何かザワザワと嫌な感じがして仕方がなく…。それは多分、Soviet Montageさんたちは「多少は技術もわかる制作者の集団」であるのに対して、Ampの開発チームは、現状「技術者のみ」で動いているのではないかな?と。
なんというか、「後からピントカメラ」もそうなんですが、技術開発の過程に「デザイナーの視点」が見えないもの(=技術者だけで作っているテクノロジー?)って、ボクはどうも生理的に駄目みたいです。「こういう事ができるぞ(ハード思考)」は、すべからく「こういう風に表現しましょう(ソフト思考)」と掛け合わされていて欲しいよなぁ、というか。
いろんなものが出てきますねぇ。
発想はあっても作るところまではなかなかいかないものです。
また昔話ですが(笑)マトリックスのマシンガンショットが流行になったとき自分でもやってみたくてデジカメ1台で小型ミラーをたくさん並べワンショットで5×4=20コマが撮れるリグを自作したことがあります。
ミラー角度の調整が難しく動きは微妙でしたが一応それっぽい映像にはなりました。
まぁこんな工作も楽しいものです(笑)
う〜ん。完璧にご自分の事を棚に上げておいでのようですが、普通に考えたら、そのデジカメ1台と小型ミラーのリグ自作だって、『発想はあっても作るところまではなかなかいかないもの』のような気がしますけれども(笑)。fujinonさんて、創意工夫の人ですねぇ。
ちなみに、その「それっぽい映像」というのは、どこかで拝見できたりしますか??
その当時の会社のHPにブログとして製作記を載せていたんですが昔のデータはどこへやら…
モーションコントロールカメラの製作記も本一冊分くらいのボリュームはあったと思いますが。映像はDVテープでどっかにあったような。
久々にここのサイトで昔話披露させてもらってます(笑)
あまり過去の栄光には拘らないので聞かれないと話さないんですが…
資料もほとんど残してないし。
それは大層モッタイナイですねぇと思う反面、ボクも基本同じ性格なので、 “まぁそうですよねぇ” とも(笑)。
…それに、まだまだ昔話に花を咲かせるには早すぎますな(笑)