革命的だった HDSLRの波に大きなうねりが生じ、ついに第2章の幕開けを迎えた今年、2012年。良くいえば慎重、悪く言えば柔軟な発想に欠ける大手メーカー以外からの全く新しい提案として、最近は Digital Bolex D-16、BlackmagicDesign Cinema Cameraなど、スーパー16mmサイズ(に近い)センサーを搭載したカメラが旬な話題となっています。
そして、こうしたラージセンサーならぬ “ミディアムセンサー(?)を搭載した RAW収録シネマカメラ” といえば、実は先鞭を付けたのは、スウェーデンの Ikonoskop社です。同社では、あたかも遙か以前から現在のこうした新しい動きを予期していたかのように、およそ一年前には、すでに独自の 16mmサイズ・センサーを搭載したカメラ、A-Cam dIIを発表し、一部業界の耳目を集めていました。
▶ Ikonoskop
▶ raitank blog : Ikonoskop a-cam dII という選択肢
A-Cam dII出荷開始以降、急速にその名を知られるようになった Ikonoskop社は、その後もあの Arriが A-Cam社製 16mmカメラの北米代理店になったこと、あるいは dII用のリグ・セットアップ(上写真)を用意してくれたことを発表したり、はたまた(ボクが個人的に 3Dに興味がないので敢えて採りあげませんでしたが(汗))画期的に小さく軽い一体型 3Dカメラ、A-Cam 3D(右写真)の開発を表明したり、ときどきニュースの種になっていました。
その Ikonoskop社がまたもや “世にもディープなこと” をやらかしてくれました(笑)。
なんと、今度は世界初のデジタル “モノクロ” シネマカメラを開発中だと言うのです(笑)。その名も…
A-cam DII Panchromatic Carl T. Dreyer Edition
▶ Cinescopophilia : Ikonoskop A-Cam DII Panchromatic Black & White Digital Cinema Camera
「パン・クロマチック」、つまり「パンクロ(全整色性)フィルム仕様」。
パンクロ・フィルムは、わかりやすく言うと “肉眼で見るのと同じような、可視光線全域の波長(=明暗)に感光する写真フィルム”。
さらに噛み砕いた日常語で表せば「モノクロフィルム」のことですね(笑) この辺り写真家の皆さんには常識でしょうか。
そして、品名末尾に記された「Carl T. Dreyer」は、1920年代に活躍した高名なデンマーク人の映画監督、カール・テオ・ドライヤー氏。終生、独自の作法でモノクロの映像美を追求し続けたドライヤー監督のシグネチャーモデル、という意味ですね。
ドライヤー監督は「ミカエル(1924)」や「裁かるゝジャンヌ(1927)」、はたまた「吸血鬼(1930)」といった映画で世界中にその名を轟かせる映画史上の偉人だそうですが… すみません、不勉強なボクは今日の今日までお名前すら知りませんでした(爆)。
▶ Wikipedia : カール・テオドア・ドライヤー
▶ CARL TH. DREYER – THE MAN AND HIS WORK
なにはともあれ、A-cam dII Panchromatic。敢えてモノカラーセンサーを搭載し、モノクロ映像しか収録できないカメラを作る… ということで、なにはなくとも白から黒へ至る広いグラデーション・レンジと、なめらかな階調再現性に最大限にこだわった結果、なななんと!全フレーム RAW TIFFシークエンスで収録という、ちょっとマジキチな仕様になっているもようです(汗)。(゚Д゚;)
まだ、『現在こんなカメラを開発中ですよ〜』というティーザーが明かされただけで、「モノクロ撮影オンリー」+「TIFFシークエンス収録」以外の詳細は不明ですが、まぁなにはともあれサンプル映像をご覧ください。
オリジナルデータのダウンロードは不可、Vimeoの Web圧縮のせいで、ときどき空にうっすらバンディングが見え隠れしているのがちょっぴり残念!
ですが、「うへぇ〜!そんな選択肢もありなん?」という、またしても「大手メーカー」からは決して出てこないだろう、「小さな工房」なればこその柔軟な発想から生まれたニッチなカメラの登場を祝して…。(^_^)v
10 Comments
デジタルシネマカメラ 変態仕様で続々登場いう感じですね このパンクロ画像とてもいい。おもしろいです。このカメラボディ3台用意してRGBプリズム分光してあとで合成するスーパー変態テクニカラーなんてやってみたいですね(笑)
はい、ヘンタイ仕様というか、原点回帰というかわかりませんが…(笑)。でも、いまどき?のパンクロ映像が、仰る通り、ことのほかイイんですよね、コレが。あとは、「スーパー変態テクニカラー(スリーストリップ?)」が気軽に試せるお値段だったら文句なし!なんですが、果たしてどうでしょうか…。
なんだかこの映像、ものすごっくCmos歪みが無いんですけど・・
ローリングシャッター現象皆無っ。
CCDとは思えないし、Gシャッターでも積んできたんでしょうか?
Kappaさん、Ikonoskop dIIは昨年出た初号機以来、センサーは CMOSではなく CCDのようですね。なので、コンニャク現象とは無縁。 (^_^)v
シブいなあ。
表現主義自主映画撮るか。
もちろんお値段はRGB全部出るカメラの1/3なんですよね!
あはは。そんな、仁太郎さん。今どき表現主義映画を撮ろうか?なんていうアート至上主義者がお値段のことなんか、気にしたらいけません。(^_^;) でも、実際いくらで出すつもりなのか? また、どれくらい売れるのか? 気になります。
この方の他のビデオのA-Cam dII、色深度12bitの画もなかなか良いですね
もしかしたらこの辺りのセンサースペックがいろいろと遊べて楽しいのかもしれません
何かボケ足にばかり気を取られて肝心な所を忘れてるのでしょうか。
https://vimeo.com/24822862
『その場の空気を丸ごと収録しました』みたいな絵。しかも、8mmじゃなく35mmでもなく、16mmのフィルム・カメラで撮った絵。たぶん大手メーカー以外の小さい会社がカメラを作るなら、目指すのはこういうカメラなんでしょうね。スペックなんて、どうでもよく思える道具。撮影するのが楽しくなる道具。
コレは素敵すぎるっ…!
わくわくしますね。
こんなに欲しくてウズウズするモノって
そうめったにないと思う。
これで撮るのたのしいだろうなぁ。
デモ映像もすばらしい。
なんなんですかね?フィルムカメラだったら、中に入れるフィルムの種類を変えれば白黒でもカラーでも撮影できるけど、このカメラは壊れて捨てる日が来るまで白黒しか撮れない!ってんですから、普通に考えたらただの「機能が足りない」カメラのはずなのに(笑)。魅力的なんだなぁ〜。。。