世界三大映画祭の一つ、第62回ベルリン国際映画祭が2月19日に閉幕しました。今年、金熊賞を受賞した「シーザー・マスト・ダイ」という作品は、なんと!コーエン兄弟より四半世紀以上も前から兄弟で監督&脚本家ユニットを組んできた、あのタヴィアーニ兄弟監督作と聞いて、えええっ!まだご健在だったのですかっ!?とビックリしましたが(笑)、ままそれはさておき。
ボク的には、なんといっても32カ国/58作品の中から、今泉かおり監督の長篇デビュー作「聴こえてる、ふりをしただけ(略して “聴こふり”)」が、ジェネレーション部門長編作品に選出された!というのが最大のニュースでした。
この作品は、「Parallel」を手伝って頂いた岩永 洋さんが撮影監督を務めた作品で、以前、岩永さんのセミナーに参加 してさわりを見せて頂いた時から、絵は抜群にキレイだし子どもたちの演技は素晴らしいし、傑作の予感をひしひしと感じていただけに、ニュースを見て「うひょ〜!おめでとうございます!!」と興奮してしまいました。早く全篇見てみたいです! (^_^)v
そして、この「聴こふり」の報をきっかけにしてベルリン国際映画祭関係のニュースを調べている過程で見つけたもう一つの収穫が、同映画祭でプレミア上映された「SIDE BY SIDE」というドキュメンタリー作品(Christopher Kenneally監督)。
映画制作における「フィルム vs デジタル」を、世界中の業界人にインタビューして掘り下げた作品で、なぜか?本作のプロデューサーは、あのキアヌ・リーブス(笑)。自らインタビューアーとして劇中に登場しているようです。
以下、オフィシャルHPに掲載されている本作の前口上です。
▶ SIDE BY SIDE
For almost one hundred years there was only one way to make a movie — with film.
Movies were shot, edited and projected using photochemical film. But over the last two decades a digital process has emerged to challenge photochemical filmmaking.
SIDE BY SIDE, a new documentary produced by Keanu Reeves, takes an in-depth look at this revolution. Through interviews with directors, cinematographers, film students, producers, technologists, editors, and exhibitors, SIDE BY SIDE examines all aspects of filmmaking — from capture to edit, visual effects to color correction, distribution to archive. At this moment when digital and photochemical filmmaking coexist, SIDE BY SIDE explores what has been gained, what is lost, and what the future might bring.
ほぼ100年に渡り、映画制作は常に一つの方法で行われてきました。ーーフィルムで撮る。
映画はいつでも銀塩フィルムによって撮影され、編集され、映写されてきました。しかし、過去20年ほどの間に台頭してきた「デジタル方式」により、昔ながらの銀塩フィルムによる映画制作が様変わりしようとしています。
キアヌ・リーブスがプロデュースするドキュメンタリー「SIDE BY SIDE」は、映画制作におけるデジタル革命を綿密に検証します。監督、撮影監督、映画科の学生たち、プロデューサー、科学技術者、編集者、劇場主らへのインタビューを通じ、撮影から編集、VFXからカラーコレクション、配給から収蔵まで映画のすべての側面を掘り下げ、もってデジタルと銀塩フィルムが併存する現在を俯瞰することにより、この革命によって何が得られたのか? 何を失ったのか? そしてこれから何が起ころうとしているのか?を探求しています。
う〜ん。まさに僕らが知りたいテーマではありませんか。この作品も、是非見てみたいですねぇ。日本でも公開されるんでしょうか?
で、れいによって Vimeoに予告篇がアップされていました。いきなり リンチ、ルーカス、ノーラン、ロドリゲス、ソーダ−バーグといった大物がぞろぞろ出てきてビビリますが(笑)、本作のオフィシャルHPによりますと、他にも フィンチャー、ボイル、ラース・フォン・トリアーといった有名監督、あるいは J・ジャナード卿やら、あのビットリオ・ストラーロ様まで、多彩かつ蒼々たる方々がインタビューされているようです。
▶ SIDE BY SIDE : PRODUCTION NOTE : CAST
この予告篇だけでもかなり「そそる」ものがあるので(笑)、以下、参考までに登場順に拙訳を掲載しておきますね。
Keanu Reeves
“…では、もうフィルムは必要ないと?”
David Lynch
“そう決めつけないでくれたまえ、キアヌ君。でも… そうだね、ボクはもう要らないよ”
George Lucas
“映画制作の現場は現在、重大で大がかりな過渡期にある。デジタル処理がすべてを急速に一般化しているのだ”
Lena Dunham
*低予算一眼ムービー「Tiny Furniture」で劇場公開デビューを果たした期待の新進監督
“「デジタルビデオ革命」がなかったら、映画を作ろうなんて思わなかったわ。いろいろ難しい機械も使えなくちゃならないし”
Robert Rodriguez
“ボクは、表現の幅を拡げてくれる新しい「何か」をいつでも探してる。昨日まで想像もできなかった事を可能にしてくれる機材や手法をね”
Christopher Nolan
“今のところ、まだ「フィルム」を越えるイメージ技術や方法は存在しません。でも、そろそろ強制的に移行させられるんだろうなぁと思っています”
James Cameron
“フィルムじゃちゃんとした3Dは撮れないんだよ。だから… ボクの中では、フィルムはすでに10年前に死んでいる”
Walter Pfister
*C・ノーラン監督全作品の撮影監督
“3Dは大キライだ。あのメガネをかけると腹の辺りがムカムカする。3Dブームなんて単なるマーケティングだろ。違うかい?”
Steven Soderbergh
“(オールデジタルのREDと出会った時)フィルムに電話して「ほかに好きな人ができた」と告げねばならないと思ったよ。なぜって、これこそが「未来」だと思ったからさ”
Martin Scorsese
“それとこれとは別の話だ。どこが違うのか?どう使ってストーリーを紡ぐのか?は、ひとえにフィルムメーカーに任されてるんだからね”
そして、最後に蛇足を一題。「SIDE BY SIDE」のキャストに、タヴィアーニ兄弟、コーエン兄弟と並ぶ(?)兄弟ユニットにして、ボクの大好きな Matrixの生みの親である「ウォシャウスキー兄弟」がクレジットされています。…ところが、なんか名前が微妙に違うんですよ。ウォシャウスキー兄弟= ラリーとアンディの筈なのに、ラナとアンディって書かれている。はて、これは一体?…と思ったらアータ! (゚Д゚;)
いつの間にか、ラリー(♂)は、ラナ(♀)に生まれ変わったのだそうです!
え?え? じゃ、もう「兄弟」じゃなくって、ウォシャウスキー「姉弟」なのっ!?(…って、この際どーでもいいのか?(笑))
ウィキペディア日本語版には
『兄のラリーは2004年に性別適合手術を受け、ラナ(もしくはリンダ)・ウォシャウスキーとなったと一部報道されたが、それは離婚した妻が離婚調停時に「ラリーに女装趣味がある」と発言したことや、ネット上に眉毛を女性のように剃ったラリーの写真が流出したことが原因であり、実際は性転換はしておらず、女装趣味もないとされている。だが、そのあとラリーはロサンゼルス国際空港にて女装した姿で撮影された。』
▶ ウィキペディア:ウォシャウスキー兄弟
…なんて微妙な書かれ方をされてますが、海の向こうのあまたの情報、並びにこの「SIDE BY SIDE」のインタビュー風景とか見ると、どうやら趣味の女装ではなく “本職の女性” になっちゃった感が強いように思われます。なんとまぁ。(◎_◎;)
20 Comments
まぁ、10、20年後に今最高のデジタル技術で撮った作品を違和感無く観れるなら完全デジタル移行の頃合いなんだろうなぁー。ところで「次回作は予算は潤沢にあるからフィルムカメラでもF35でもREDでもどのカメラで撮っても良いよ」と言われたら日々フィルムのルックやら被写界深度に拘るDSLR映像作家の皆さんはどれをチョイスするんだろうか?
なぜか?ek2008さんのコメント、スパムになってました!リンクとかも含まれていないのに、なぜでしょうね?(汗) 週末とて、気がつくのが遅れました。どうもすみません!!< (_ _)>
> 「次回作は予算は潤沢にあるからフィルムカメラでもF35でもREDでもどのカメラで撮っても良いよ」と言われたら
リンチさんやキャメロンさんのように、「もうフィルムは要らない」ってハッキリ決別宣言しちゃった人から、「地球上に存在するフィルムラボの最後の一軒がなくなるまでフィルムで撮り続ける!」と熱愛宣言を表明しているスピルバーグさん(この映画には登場していないようですが)まで、さまざまな立ち位置がありますよね。ココはあまり突っ込むとアメリカでもかなり感情的な衝突が起こる部分ですが、この映画がどこまで突っ込んでくれているのか?ぜひ見てみたいです。
フィルムvsデジタルって本当一番興味ありますよね。日本で公開されるといいなー。
ですねぇ。…でもよくよく考えてみたら、一昨年末にはすでに「最後のフィルムカメラ」の製造が完了してしまってますし、フィルム供給元の KODAK社が実質的に倒産ときては、いまさらアナログが持ち直すことは万に一つもなさそう!?ですけれどもね。(^_^;)
これは観たいっ!個人的には大林宣彦も登場して欲しかったですがw
おぉ!Higuchinさん。やっぱ見たいですよね。いきなり DVDとか BluRayとか、あるいは Web公開とかしてくれないものですかねぇ?(笑) (^_^;)
何で撮る、で無く何を撮る、
かが問題なんだァ〜( ´ ▽ ` )ノ
最近ハンディカム系に興味を持ち始めた
まるめでございます。
またリュミエール博物館に行きたいもんです( ´ ▽ ` )ノ
ホントそうですよねぇ、師匠。ボクも最近ジワジワとそう思い始めまして、思い始めたら今までの反動なのか何なのか?突然、機材に対する情熱がなくなっちゃいまして、実は今ちょっと困ってます。新しいカメラとか道具とか、ぜんぜん欲しくなくなっちゃって。…って、あれ? 丸目師匠はそういう意味ではなくって、今度はハンディカムLOVEなんすか? (^_^;)
これは是非聞いてみたかった題材ですね。プロの人のデジタル化への考えって聞きたくても聞けませんからねぇ。
マトリックスはあれですね、リローデッドのベッドシーンで親に目隠しされたのがいい思い出です←
タイムスライスの映像は本当に革新的でしたねぇ。
でもあの映像、今だったら5D並べて静止画撮ってTwixtorでコマ補間したら撮れそうな気がしますけどどう思います?
へぇ〜。ボクなんかもう子どもの時代を離れて久しいから、“そういう感覚” をすっかり忘れてますが(笑)、kurasakiさんにしろ、negちゃんにしろ、親と映画を観るんですね。…それ自体がちょっと新鮮だったりして(笑)。
一世を風靡したタイムスライス(ブレットタイム)撮影は、今や高価な5Dは必要なくって、GoProを沢山並べて実際にやってる人が大勢いますよね。先日のバージョンアップで、GoPro自体にブレットタイムを意識したシンクロ機能もついちゃいましたし。楽チンみたいですよん♪
▶ http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=d0x52u2yzgI
揃ってドラマだの映画だの見るのは多いですねぇ。それも引っ越すまでの一ヶ月位ですけど。
今更DVDを引っ張り出して見てみるとやはりベッドシーンはかげk(ry
リローデッド以降タイムスライスは全部CGで作成されてるらしいですね。何十台もあるカメラのピントを合わせるのが大変だったらしいですが。
GoProだったらほとんどパンフォーカスだからそれも簡単に出来るんですね。いやはや凄い時代になったもんです。
そうかGoProという手があったか…。
SIDE BY SIDE 非常に興味深いですね。
デジタル技術の恩恵にどっぷり浸かっている自分が言うのもなんですが、ノーラン監督のマルチカメラ嫌い&できるだけ実写&フィルムへのこだわりには感服します。
そしてなによりビックリ、ウォシャウスキー姉弟になっていたとは…
小学生のとき母に無理やり観せられたマトリックスには、子供心ながら度肝を抜かれましたが、色々とやってくれますねこの姉弟は(^_^;)
ノーラン監督といえば、ただアナログなだけじゃなくって、最近はあの巨大な IMAXカメラにご執心ですから、DoPのかたのご苦労は並大抵ではないはずですよねぇ(笑)。
…ところで、我が子にMATRIXを無理矢理、見せるなんて!kurasakiさんはステキなお母様をお持ちですねぇ。(^_^)v
他にも、プライベートライアンやらファイトクラブやらスリーピーホロウやら…
母は「あれは綿密に計算された情操教育だったのよ」なんて言ってますが、世が世なら児童虐待と言われたかもしれません(笑)
どうも、ごぶさたしております。
おっとっと、こりゃあやられましたね。いい企画です。
自分たちの職業の未来を、当事者たちが真剣に考えてる感じがしますね。
George Lucasが、デジタルのプロセスがすべてを一般化する、と言ってますね。
“democratize”と言ってますけど、まさにそうなんですよ。一般化、民主化なんです。
DTPとWebが始まったときに、これはメディアのdemocratizationだ!メディアは民主化されるぞ!と思って早20年。ついにGeorge Lucasまでもがそんなことを言うようになったのだなあ、と感無量。
やっぱりデジタルは「革命」ですねぇ。
「デジタル革命」は、DTP → デジカメ → Webの順番で進んできましたね。そして、それぞれ対応する「製版、写真、出版」の業界のアナログの “職人” たちを抹殺してきました。その一般化、民主化の結果もたらされたのは? 良い事たくさん、同時に悪い事もたくさん。どこまで掘り下げているのか、ホントに興味津々です。見たいですねぇ〜。
こりゃもう必見ですよよね。むしろ映画館ではなくブルーレイで見たいです。つーかキアヌはほんと面白い仕事するなあと感心してました。
そして撮影に使ってるカメラはPanaのAF105にゼンハイザーのワイヤレス。以前、Z5Jを持って走ってる写真が出てましたけど、なんかそういう人なんでしょうなあ。。
なかなか進まないCowboy Bebopの企画、もうキアヌが自分でファンムービーとして撮っちゃえばいいのにw
あ、仁太郎しゃん、その発言は御法度のはず!(笑) 某muu先生に斬り捨てられますよ!(^_^;)
汚い格好して公園のベンチで一人寂しくパンかじったり、地下鉄(←乗るんだ!)の車内で女性に席譲っても気づかれなかったり、キアヌさんって昔から色々イロイロ逸話がありますよねぇ。きっとヘンな人なんだろうなぁ〜…