REDに逆風 x2題

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arri_vs_red

先週の 1月16日(現地時間)、米・アカデミー賞のノミネート作品が発表されました。最多ノミネートはおおかたの下馬評通り、10部門で選出された「ゼロ・グラビティ」と「アメリカン・ハッスル」の二作品。次いで「それでも夜は明ける」が 9部門で後を追っています。アカデミー賞、最大の栄誉と言えば、もちろん「最優秀作品賞」なわけですが、ノミネートされた8作品に関しては、なにしろ「ゼロ・グラビティ」しか見ていないのでコメントのしようがありません。

が、それよりも、もっともっと “僕らにとって” 気になる話題を Setlife Magazineさんがスクープしています。
▶︎ Welcome to Setlife

曰く、今年のアカデミー「撮影賞」「作品賞」の候補作全12作は全て、一つの例外もなく Arriのカメラで撮影されている!というのです。「キャプテン・フィリップス」は Aカメが Aaton Penelopeだし、Bカメまで含めれば Phantom Flex、Cinema EOS C300、C500、あるいは GoProなんてカメラまでリストされている。…ところが、しかし、それなのに。なんとも驚いたことに REDで撮影された映画がただの1本もない!と(ま、そういう意味では SONYもありませんけどね…(笑))。

※ 以下は Setlifeさんの作った画像に raitankが邦題を追記したものです
01_NoRED
02_NoRED

Arriということでフィルムカメラも含まれてはいますが、作品の多くは言わずと知れた Alexaシリーズで撮影されています。Alexaといえば最大解像度は3k以下、Arri RAWよりも使い勝手の良いフルHDの ProResで収録できることで、世界中の TV業界で大人気!!

…なことは知っていましたが、こうしてみると Alexaっていつの間にか(?)映画界も席巻していたのですね。いやあ勉強不足でした。というかコレ、首尾一貫して「Digital Cinemaといえば!」を標榜してきた RED陣営としては、かなり強烈な痛手に違いありません。

Alexa

そして REDにとっての痛手といえば、上記アカデミー賞ほどのインパクトはないものの、昨年末の12月17日、カナダはブリティッシュ・コロンビア在住の DP、Dave Wallaceさんが書いた一篇のコラムが欧米の映像業界人のあいだで大いに話題になりました。そのコラムの題名は、なんとも過激かつ挑発的過ぎる『ボクが REDを手放して格下の C100に乗り換えた理由(Why I Sold My RED and Downgraded to a C100)』。
▶︎ FSTOPPERS.COM : Why I Sold My RED and Downgraded to a C100

WhyISoldMyRed

いやあ、ページ冒頭に掲げられたタイトル写真(↑)からして「アンタ、信者にケンカ売りたいだけだよね?」とでも言いたくなるコラムです。内容をごくごく大雑把に要約すると、『REDで撮れる絵は確かに素晴らしい。けれど撮影後の現像処理に始まる煩雑で複雑で手間と時間ばかりかかる“後処理”を考えたら、ボクはもっとクリエイティブの本質に近い部分、ワークフローなんかじゃない部分に手間と時間と労力をかけたい。撮影時にキチンとやることをやっておけば、廉価な C100でも REDと比肩しうる絵が撮れるんだから!』というもの。


コラム内に埋め込まれた Daveさん撮影のサンプル映像(↑)をどう捉えるか?で、彼の意見に対する感想もまた変わってくるかとは思いますが(笑)、このコラムには(案の定というか想定通りというか)RED信者が大挙して押し寄せてコメント欄が大炎上。自身がかつて RED及び信者から迫害(?)を受けた Philip Bloom師が援護射撃で参戦したりして、それはもう〜オモシロイことになりました(笑)。

…ああしかし。市井の DPによる「アンチ宣言」が物議をかもしたり、あるいはアカデミー賞が Arriに席巻されたりといった REDに対する向かい風が逆巻く時、今までだったら、必ず、必ず、必ず、いの一番に駆けつけて、頭頂から湯気を発しながら猛烈な勢いで反撃の咆哮を放っていたあの方(Jannard総帥)が、今はもういません。同じく、年がら年中忙しく世界中を飛び回りながら、グローバルなシンパの結束を束ねていたあの方(Tedさん)も、もういません。

するとハタから見ている身としては、なにやら今ひとつ… いや今三つくらい盛り上がりに欠ける のであります。(^_^;)

そう考えると今の REDにとって最大の痛手とは、実は上述したような外部からの逆風自体ではなく、レジスタンスを指揮するボス、また前線の切り込み隊長の不在、ひいては「REDの雄叫び」が聞こえなくなってしまっていることなのか?などと考える今日この頃なのでした。

24 Comments

  1. funkyfrog
    Posted 2014/02/24 at 23:16 | Permalink

    映画館でエンドロールを最後までチェックするのが習慣で、鑑賞後、IMDbでいろいろ調べてしまう性癖の持ち主です。
    そんなわけで、ハリウッドではARRIのカメラは(フィルムも含め)ものすごく使われているんだなあ、と思ってました。全編Red One MXの”Social Network”のような映画のほうが珍しく、一部に使っている映画がぽつぽつ、という印象。
    カメラ勢力図はこれからどんどん変わっていきそうで、個人的には楽しみです。

    • Posted 2014/02/25 at 19:19 | Permalink

      エンドロールを絶対最後まで見てしまうところまではボクも一緒です。昔は最後に必ず見ることができた KODAK、あるいは FUJIのロゴがなくなり、それと一緒に DU ARTをはじめとしたフィルム・ラボのロゴもめっきり見なくなった… ってところまでは意識してたんですけれど。そう考えると、ARRIはフィルムの時代から一貫して映画産業の中心に鎮座ましましていたんですね。と書いていて思い出したのは、ZEISSレンズが全く同じポジション? やっぱドイツって凄いですね。。。

  2. tedukakaz
    Posted 2014/02/22 at 14:12 | Permalink

    あれ?
    TEDさん、退職されてたんですか?
    連絡来てない(^^;

    • Posted 2014/02/22 at 15:15 | Permalink

      えー?もう去年9月の話でやんす。今では 20TH CENTURY FOXスタジオの相談役に納まっていらっしゃいます(笑)。

    • tedukakaz
      Posted 2014/02/23 at 08:24 | Permalink

      がーん。
      全然知りませんでした。

  3. 断空我渡辺
    Posted 2014/02/14 at 02:29 | Permalink

    raitankさん、どうもご無沙汰です。
    なんだかArri完勝、REDざまぁな記事内容(RED批判をされてる訳ではないのでしょうが)ですけど
    このAlexaってカメラ、ど~もワクワクしない、っていうか、見た目に担ぎたいって意欲が沸かないんですよねぇ。


    どっかの漫画家がろくすっぽ資料も見ないでテケトーに描いたTVカメラみたいに見えてならない…

    • Posted 2014/02/14 at 04:19 | Permalink

      あらま、断空我渡辺さん、そうなんですか? ボクは元から肩乗せしないヒトなのでアレですが、世のショルダー派の皆さんはこぞって Alexa、Amiraシスターズに夢中なのだとばかり思ってました。…というか海外での評判まで含めて、Alexaの形状が気に入らん!という声は、かなり少数派のような気が。(^_^;) 断空我渡辺さん、ひょっとすると孤高の肩乗せ派かも?

  4. Akira
    Posted 2014/01/31 at 19:37 | Permalink

    ご無沙汰しております。
    オスカーにノミネートされている作品群が、ほぼARRIで撮影されているんですね。
    是非とも一度 Alexa を触って見てみたい物です。

    そういえば、日本で撮影された映画「Emperor」も ARRIで撮影されていたと思います。

    僕個人としては、カメラの個人所有はBMCCまでで十分かと思います。
    あとは作品の中身、公開形態やバジェットなど色々なファクターがあると思いますが、
    それによって一番合った(妥協点も含めて)カメラ選びになるでしょうね。

    でも毎回思うのは、ローバジェットの作品でも良いレンズを使いたいなぁという事です。
    最後は記事の趣旨から外れてしまいました。。
    すみません。

    • Posted 2014/02/05 at 12:11 | Permalink

      Akira さん、お久しぶりです!& 相変わらずの長旅続きでお返事が遅くなりました。どうもすみません。

      僕も「道具」はレンタルじゃなくて自前で手元に持っていたいクチです。そして手元に持つのは BMCC くらいで充分だと思っているのも同様ですねぇ。さらには、カメラはカメラで重要ではあるものの、どちらかというとレンズにこそこだわりたい!っていうのも同じ!…まぁ皆さんそうかも?ですが。(^_^)v

  5. Posted 2014/01/29 at 15:44 | Permalink

    この「オスカーでREDゼロ」ネタに対抗して米サンダンス映画祭版記事が。こっちではREDも人気ですね:
    http://goo.gl/LvalN5

    オスカーもたまたま今年度は、という話だけかと思います。さすがに「パシフィック・リム」じゃあノミニーは難しかったのでは(苦笑)

    以前欧州のDPに、ARRIがS35サイズ素子を2.8Kピクセルに抑えた理由なんてありがたいお話を伺ったのですが、すんごい訛りある英語でよくわかりませんでした(泣)。とりあえず小さなセンサーに4Kだなんだとピクセルカウントを増やすのはよろしくないと仰っていたのを覚えています。

    先日の「キヤノンが2.5Kグローバルシャッターカメラ!?」、あんなステキな噂話に惹かれてしまいますね〜。

    • Posted 2014/01/29 at 21:58 | Permalink

      >こっちではREDも人気ですね
      ですね、ですね。そして、それがヤバいですよね。本来的に動画カメラでは全然ない、キャノンの HDSLRたちと混じって並んでるんですもの(笑)。

      画素ピッチの問題、たしかに今の技術ではまだ無理があるのかも?ですが、その「無理」って、でも静止画ではすでに最大6Kくらいの高精細な写真が撮れてるわけですから、実際は画素ピッチというよりも、連続撮影にまつわるモロモロ(データ読み出し速度とか記録の面とか)じゃないか?とも思うんですけどねぇ。違うのかな?

  6. blackeyes_photo
    Posted 2014/01/27 at 22:22 | Permalink

    すみません!トピックを二重投稿してしまいました…(なんか前もやったような…)
    お忙しいところ申し訳ありませんが一つ削除お願い致します。

    REDのトーンが好みではないとかS/N比が良くないとかそういうところでRED離れしてるとは思えないですね。使う人によってクオリティは出せるので。ALEXAが支持されてるのはトータルのワークフローや使い勝手のよさな気がします。

    今F65(4K60P)とファントム4K(900fps)を検証していますが、どちらも画素ピッチがきついせいか1枚絵としての表現力はなんだか見てて悲しくなります。5万円くらいのAPSCカメラの静止画レベルにも達していない感じ。中判デジタルのレベルの絵で動画が撮れるようになるのはいつの日なんだろうと途方に暮れました。4k10bitの厳しい絵よりも3K16bit(RGB)の本物の絵が撮れるカメラが切に欲しいと願ってしまいます。

    • Posted 2014/01/29 at 21:57 | Permalink

      blackeyes_photoさん、重複トピック、消しておきました。対応が遅くなってすみません。先週から福島〜広島と出ずっぱりで。帰京したら例のゴミ箱 MacProが届いていたんですが、未だ箱から出しただけでセットアップしている暇がなく…(泣)。

      それにしても、今は F65に Phontom 4Kですか(笑)。しかも、両方ともダメ出ししてるし(笑)。
      ま、でも、センサー〜ストレージ〜編集環境とすべてが今より進化しないとアレですから、まだしばらくは時間がかかるんでしょうね。ボクなんか、もうBMCCで大満足なんですけどねぇ〜。(^_^;)

    • blackeyes_photo
      Posted 2014/01/30 at 12:04 | Permalink

      raitankさん
      あ、いえ、ダメってわけじゃないんですが、こんなハイスペックで高価なカメラでこんなものなのか・・・というのが本音でした。使えないってわけじゃないですが、4Kはまだ過渡期なんだなぁと。
      ご対応ありがとうございました!

  7. 55catcatcat
    Posted 2014/01/27 at 10:37 | Permalink

    この記事へぇーと思って読んでいました。
    このところREDのEFマウントだけw手に入れたりしてREDを見直しているので意外といえば意外ですが、画に飽きちゃったんですかね?
    この表でもAlexaの機種は様々なようでバリエーションの多い事も要因ですかね。

    秋頃にベルギーの知人はRED系からF55に乗り換えが流行ってるよと言っていたので世界的にRED離れですかね…

    私はシネマEOS系の画に飽きましたww

    • Posted 2014/01/29 at 21:57 | Permalink

      ご返信が遅くなりました。またぞろ、55catcatcatさんのふるさと、広島に行っておりました。ま、今回は市内ではなくて福山のほうでしたが。。。しかし、しかし。「REDのEFマウントだけ」って、何やらまたマニアックなことをして遊んでいらっしゃるようで(笑)。Alexaはたしかに製品ラインナップが盤石かつ豊富ですよね。REDは Scarletをディスコンしてる場合じゃない気がするんですけどねぇ。

  8. ragi
    Posted 2014/01/20 at 14:51 | Permalink

    どちらの画を好むか…それに尽きますよね。
    費用対効果(個人的な)がREDでは(頑張った割には)満足出来ず撮って出しのC100の方が楽だし画も良いじゃんとなればそうだろうし、
    ラチュードも気にならない人はそうだろうし(って言うか殆どの人はそうでしょうねw)現像頑張っても反応が薄ければおのずとこうなるのかも…。

    RED…うーん、憧れだけど欲しいかと言われれば欲しくないなぁ、、、ええ、僕はBMCCで十分満たされてますので…w

    • Posted 2014/01/21 at 11:49 | Permalink

      みんな「人それぞれ」って言うくせに、その「それぞれ」を認めない人が大勢いるってことなんだと思うんですよ(笑)。アンチにも、信者の側にも。「結局、カメラなんて道具なんだから」っていう言辞も似たような図式っていうか。そういう意味では、今回採り上げた Daveさんのようなメッセージを発する意図がよくわかんない(やっぱケンカ売りたいだけか?)。

    • ragi
      Posted 2014/01/21 at 15:49 | Permalink

      ラチュード→ラティチュードでしたぁ…orz(指摘してくれたY氏ありがとう〜)
      まぁ結局は「自分が使う機材が一番!」ってな事なんでしょうね〜。。。

  9. Posted 2014/01/20 at 12:19 | Permalink

    うわわわ!!!!
    僕にとっても凄くタイムリーな話題ですね!!ww
    でもまぁ、ここは迷い無くRED買って、それから考えるようにします!!

    • Posted 2014/01/21 at 11:49 | Permalink

      えー?ぜんぜん迷う必要なんてないですよ。みんな、パカパカとせわしなく何年かおきに買い替える必要がない、自分にとっての「決定版」を探しているっていうことで。そしてその尺度は人それぞれってことで。ボクはまだ自分が REDのレベルに達していない(と思っている)から買ってない、ってだけだったりします…(笑)。

  10. Neg
    Posted 2014/01/20 at 09:20 | Permalink

    Arriは確か自社調査で「4Kで上映しても実際に4K解像度の恩恵を受けられるのは前方正面の僅かな席のみでそれ以外は2Kと大差ない」という調査結果を発表してました。こうして多数の採用例を見ると、下手に解像度を上げなくてもFHDで事足りる(或いは4K以上の魅力がALEXAにある)という見解のようですね。
    日本でも昨年の日本アカデミー大賞を受賞した作品がALEXA・ARRI RAW収録だったり、昨年凄い視聴率を取ったドラマ「半沢直樹」でも使用されたり、と大活躍のようです。

    …4Kテレビ、流行るんですかねぇ…と日本企業の行く末に一抹の不安を感じない訳にはいかないといった所です。

    • Posted 2014/01/21 at 11:49 | Permalink

      Negちゃん、相変わらずそっち方面に詳しいねぇ。そうなんだ。実は堺雅人ファンなもので(笑)、半沢さんは見ていたけど、まさかアレが Alexaで撮られていたとは知りませんでした。

      4k TVは流行るかどうか?というより、そのうち(5年以内くらい?)売られる TVがすべて 4k TVオンリーになったりする方向ではないか?と思ってるんですけど、どうでしょうね。。。

    • Neg
      Posted 2014/01/25 at 15:06 | Permalink

      ALEXAは『半沢』ではスタジオカメラやENGと組み合わせて要所要所で使用されていたようです。

      なるほど、こういう映像の話だとつい先刻のトレンドだった3Dテレビと比較してしまいますが、4Kはまた違う話ですものね。ただ実際に4K放送が始まって買い換えないといけないなんて話になれば一層テレビ離れを助長しそうで、テレビを4Kにすることが果たして良い事なのかどうか…という点で疑問ですね。

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