争点がピンポイントでわかった RED 対 SONY

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ShotOnRED

REDって本当にオモシロイ会社です。(^_^) えー!REDが Sonyを訴えたって? で、争点はなに? んーわかんなーい! …といった会話が世界中で交わされていたに違いないここ数日。すると、Reduser.netという公の場所に Jannard会長自らが降臨し、今まさに係争中(…というか、自ら係争を始めたばかりの)案件についてとくとくと語り始めたりするんですから…(笑)。

というわけで、昨日、「争点がよくわからない RED 対 SONY」なんて記事を書いたと思ったら、Jannard総帥の書き込みによって、いきなり争点がピンポイントで明らかになりました(笑)。ズバリ!圧縮 RAWファイル形式、つまり REDCODE RAWの技術特許侵害だそうです。

REDが開発した REDCODE RAWは、しばしば “至上主義” 系の人から『RAWなのに “圧縮” だって?』と失笑混じりに揶揄されることもある特殊なファイル形式です。センサーが感じた光の情報を丸ごと収める RAW形式は、スチルといわず動画といわず、激重になること必定なファイル形式として知られていますが、REDCODE RAWにあっては、3:1 〜 18:1まで任意に選べる圧縮率をもってファイル容量を可変させることが可能です。
raitank流 RED概説

以下、Jannard総帥の言から、争点に言及した部分を引用させて頂きましょう。
Reduser.net : Patent lawsuit…

If ideas are King… what do you do if they are taken? Roll over and pretend that everything is OK? Sorry. I don’t do that. Especially when people’s jobs are at stake. I fight.
If someone breaks into your house and steals all your possessions… you call the police. When someone takes your ideas, inventions and designs, you call your attorneys. That is life.

This is a REDCODE RAW issue… one that many have acknowledged for years as a core invention of RED and incredibly important to what we all are doing.

REDCODE RAW is not “rounded corners”. It is fundamental to recording high resolution images on camera to small media. It is brilliant. And it is no surprise that others have finally figured out (several years later) that the only way to get where they need to go is through this path. Hindsight is spectacularly clear.


もしアイデアこそがすべてだとしたら… それを盗用されたらどうする? ひっくり返って、へっちゃらなフリをするかね? 悪いが、それはオレの流儀じゃない。特に多くの従業員の雇用が関わっているんだ。オレは闘う。

もし誰かが家に押し入ってきて君の持ち物を盗み始めたら… 警察を呼ぶ。もし誰かが君のアイデアを、発明を、デザインを盗んだら、弁護士を呼ぶ。それが人生だ。

これは REDCODE RAWの問題だ… 今さら言うまでもなく RED技術の根幹をなす独自の規格として長年に亘り周知されているものであり、我々のビジネスにとって非常に重要なものだ。

REDCODE RAWは “気がついたらできていた!” という類の規格ではない。カメラに内蔵できる小さなメディアに高精細な映像を収録するための土台。実に素晴らしい規格だ。他社が(何年もかかって)ようやくこれこそが唯一の道だと気づいたとしても驚きはしない。ただし、それが後知恵であることは火を見るよりも明らかだ。

なるほど。つまり冒頭に書いたように、「RAWなのに圧縮できる」ことが「特殊」であるのは、そもそも「RAW映像を圧縮する」ことを思いついたこと自体が REDの知財なのだ、という論法ですね。

…もっと平たく云えば、「あ。いいこと思いついた!重たい RAW映像だって、圧縮すれば本体内の小っちゃな記録メディアに余裕で記録できるじゃ〜ん!」をカタチにした時点で、REDの所有する技術特許侵害が確定。ゆえに、先日市場に投入された F55、F5だけでなく、先行する F65も含めてアウト!

少なくとも RED側の主張はそういうことのようです(あ〜スッキリした)。

…実際、そう云われてみれば、たしかに最近ボコボコとあちこちから登場している RAW映像収録カメラは、Canonや Arriは RAW信号をカメラの外に出して外部レコーダーで収録する形式ですし、カメラ本体内で記録できる Blackmagic、Digital Bolex、Ikonoskopなどは、ファイル形式にオープンソースの Cinema RAW DNG形式を採用しています。そして、いずれにせよ、RED以外の RAWは「非圧縮」であることが前提。

NoFilm Schoolさんも言及していますが、現在市場に出回っている「圧縮 RAW」の映像データ形式は、REDCODE RAWの他には、わずかに GoProの CineForm RAWがあるばかり。そして、REDCODE RAWと同じ “JPEG2000を土台に開発されている” CineForm RAWというファイル形式をリリースするにあたり、GoPro社と RED社の間には何かしら正式なライセンス契約が交わされた可能性が高い、ということです。
NoFilm School : RED CEO Jim Jannard Speaks About Their Lawsuit Against Sony Regarding RAW Compression

さて、Reduser.netに書き込まれた Jannard総帥のコメントには争点に関する説明の他に、今回の訴訟が REDが苦労して創出してきた米国内の雇用を守るためのものでもあることが熱く綴られています。

#3. We have created many jobs in the US leveraging our vision and technology and we will aggressively protect our employees. Every single job matters. It is a magic trick to build a camera in the US, especially at the highest level. This cannot be done if others are allowed to just take what we have done and use our work as their own.

#3.我々は独自のビジョンと技術を担保に米国内で多くの雇用を創出してきたし、自社の従業員を守るために躊躇はしない。どんな小さな仕事も大切だ。米国内でカメラを製造するのは並大抵のことではない。最高品質のものを作ろうと思ったら尚更だ。我々が行ってきたこと、築いてきたものを他社が無断で借用するようなことが許容されるならば、こうした企業努力を継続することはできない。

この辺りの主張は、今回の民事訴訟を「陪審員裁判」にするようリクエストした REDが、公判でアピールする重要なポイントとなるでしょう。

今回の REDによる民事訴訟の是非とは関係なく、特許という発明者が受け取る権利や広く知財保護に関係する法律は諸刃の剣です。本来の目的通りに運用されれば、Jannard総帥が言及されている国内雇用の保全を含め、より良い世界の構築と維持に役立つ有用なツールであることは明白ですが、ひとたび乱用・悪用されれば、コングロマリットによる謂われのない製品の寡占化にも繋がりかねません。
こうした危険性に関しては、昨年 3rd Eye Studiosさんがとてもためになるレポートを書いておられました。
3rd Eye Studios : アメリカから撮影用LED照明がなくなる!?~LED照明の危機!

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争い事には、必ずこちらの主張とあちらの主張、二つの側面があります。REDのようなオーナー企業ではなく、逆に大企業の代表格のような Sonyさんからは、「代表による Reduser.netへの書き込み」のようなカジュアルな対応は望むべくもありませんが(笑)、今回はなにしろ陪審員裁判です。今後の展開は割とメディアの耳目を集めるカタチで進行する可能性が高いはず。争点がわかってスッキリしたところで、今後も注意深く成り行きを見守っていくことにいたしましょう。(^_^)v

…あ、そうだ。最後に蛇足をひとつ。

今回の訴訟で Sonyが侵害したとされる RED所有の3つの特許技術のその3「アンテナの受信」は、昨日の記事に「今回の件や Sonyのカメラとどういう関係があるのか?よくわかりません」と書きましたが、これは実際に関係がなかったようです(笑)。NoFilm Schoolさんの記事にも、「弁護士による記載ミスではないか?」と書かれていました(爆)。

13 Comments

  1. Posted 2013/02/16 at 18:16 | Permalink

    やほです!

    結局LED訴訟もVitecが勝っちゃいましたしね~ 

    でも、Woodencameraのケースは「あんな小さい会社ですら訴えるのかよ!」とビビリましたけど、今度は大企業相手なんでちょっとREDに味方したくなるというか(笑

    次はKineRAWに逝ってくれたら、外野としてはおもしろいんだけど!

    • Posted 2013/02/16 at 18:39 | Permalink

      3rd Eyesさん、どもです。そうなんですよ。Vitec、当たり前のように勝っちゃって。怖い世の中ですよね〜。権利の主張って、大きいところがやるとそれだけで「悪」に見える典型(笑)。あと、 KineRAWって云ったら、CineForm RAWでしたね、そういえば。

  2. Oritogalis
    Posted 2013/02/16 at 16:29 | Permalink

    総帥の語り節がなんとも素敵ですね。
    Raitankさんの訳にも熱が入るのが、当然のように伝わってきます。
    Sorry, I don’t do that。
    西部開拓、ザ・リバタリアン、アメリカン・・・ああ・・・
    しかしながらまったく蚊帳の外です。笑

    • Posted 2013/02/16 at 18:38 | Permalink

      ああ、そうかぁ。Oritogalisさんに指摘されて初めて気づきました。ボクが Jannard総帥に惹かれる理由は、ヘミングウェイの小説のようなリバタリアニズムなんだ! ( ゚∀゚) そうそう、それそれ!完全自由主義(笑)。

  3. hal
    Posted 2013/02/16 at 14:10 | Permalink

    早々に記事にして頂き、すっきりしました。ありがとうございます。予約していた55を発売日の遅れや仕様変更のアナウンスが遅く、対応の悪さにキャンセルさせて頂きました。
    今回の件で、それらが即、使用できない状態になるとは微塵も思っていませんが、正直「粗導入しなくて良かった〜」です。性能も大事ですけど、製品のイメージも大事かと…
    最新の機材や流行のカメラがいい発注者も多いですから、私の場合。

    • Posted 2013/02/16 at 14:39 | Permalink

      おぉ〜、そうだったんですか。イメージや体裁ということに関していえば、どう考えても Sonyのような大企業のほうが脆弱にならざるを得ませんよね。REDの方は「どうせ、おいらは無頼でござい!」と開き直っていられますが、Sonyはそういうワケにはいかない。そこで次の一手として、どう出てくるだろうか?と、ボクなどは全くの野次馬に徹していられますが…。いずれにせよ手塚さんもお書きになっている通り、ユーザーにはまったくメリットがなさそうな展開ではあります(笑)。

  4. tedukakaz
    Posted 2013/02/16 at 13:12 | Permalink

     謎のアンテナの正体がわかりました。ありがとうございます。

     それにしても、今回の争いはユーザーにまったくメリットが無さそうですね。
     RAWの可変圧縮なんて、明らかにSSD転送速度が上がるまでの過渡的な技術ですし。
     現状のレキサーあたりの市販USB3.0機器でも、すでに500MB/sを安定して達成してますから、データカード自体がそこに達するのもそんなに先でも無いでしょう。(というか、恐らく今年中でしょう(^^;)
     そうなれば、非圧縮RAW 4K収録が余裕になるわけで、この訴訟自体が無意味になります。
     REDは8K12K16Kを見越して、ということなのでしょうが、その時には回避方法も模索されているでしょうし。

     単に、メディアの高速化待ちで、今年いっぱいだけ、いったんRAWカメラの進歩がとまる、という何ともつまらない結果だけ生んで終わりそうですね。

    • Posted 2013/02/16 at 13:38 | Permalink

      「今年いっぱいだけ」で思い出しましたが、どうせ F55も F5も、まともにスペック表通りの機能を発揮できるようになるのは来年の話でしたよね? いっそそれまで発売を止めて、あらたに圧縮せずともデータを記録できる体裁に改良して、「F55 MarkII」「F5 MarkII」にして出せば良いのでは!?(^_^)

    • tedukakaz
      Posted 2013/02/16 at 13:56 | Permalink

       ですよねえ。
       こうなった以上、問題の責任はどこにあるかは明確で、別にSONYさんが焦る必要もないですし。
       SONYさんの持っているXQD規格は、現行の規格でも理論上300MB/s弱出ます。予定として用意されている拡張規格ではその倍の600MB/sとなっているわけで、これなら4Kも余裕です。
       当面はチップそのものの速度が足りないのでSLCは諦めてMLC組むしかないでしょうが、そこさえ我慢すれば早期実現可能でしょう。

       BMCCで、その片鱗とはいえ本物のRAWの伸びの素晴らしさは味わっているので、あれがちゃんとしたカメラに乗るなら大歓迎です。

  5. 55catcatcat
    Posted 2013/02/16 at 13:08 | Permalink

    なるほど、ピンポイントでww よくわかりました。
    圧縮RAWねぇ、呼び方を変えるだけじゃダメなんですかね?
    『RAWのようなもの』とか『半熟RAW』とか『加熱RAW』とか。

    失礼いたしました☆

    • tedukakaz
      Posted 2013/02/16 at 13:13 | Permalink

       そもそもRAWじゃないんですよね(^^;
       ミディアムレア的な何かですよね。

    • 55catcatcat
      Posted 2013/02/16 at 13:24 | Permalink

      ですよね!
      アイディアと云うかコンセプトだけでも特許の侵害に当たるのですね…
      知りませんでした。
      まあ、S社が負けようが私にはあまり関係ないっちゃないのですが、とりあえず一回くらいF55レンタルで使っておきますかねww

    • Posted 2013/02/16 at 13:38 | Permalink

      「加熱 RAW」ってイイですねぇ〜(笑)。聞く者をして「加熱したら RAW(生)じゃねーだろ!」って突っ込みを入れ易いとこが REDCODE RAWにピッタシ?(笑)

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